【ニューヨーク2021年1月13日PR Newswire=共同通信JBN】ニューヨークを拠点とするバイオテクノロジー・がん創薬企業DarwinHealth, Inc.(ダーウィンヘルス)は2021年1月11日、Cell誌のオンライン版で画期的論文「がんの転写アイデンティティーを制御するモジュール・マスターレギュレーター状況(A Modular Master Regulator Landscape Controls Cancer Transcriptional Identity)」(1、2)を公開したと発表した。同論文で、コロンビア大学とDarwinHealthの研究者は、VIPER(Virtual Inference of Protein activity by Enriched Regulon)分析アルゴリズムを適用し、汎がんサブタイプ連続体全体で機能する再発調節ネットワーク「腫瘍チェックポイント」を明らかにした。
コロンビア大学システムバイオロジー学部のEvan Paull博士を主執筆者に、DarwinHealthの共同創業者Andrea Califano教授、最高科学責任者(CSO)Mariano Alvarez博士らの研究者が協力したこの研究論文は、新しいマルチオミクス・マスターレギュレーター解析(MOMA)フレームワークを使用して、DarwinHealthの技術に情報を提供する基本的パラダイムを検証した結果と分析を示している。
米国立衛生研究所とカルロス三世健康研究所/経済・デジタル変革省(スペイン)が資金提供した同研究は、同じ腫瘍サブタイプの個々の患者で起きる異なる遺伝的変化が、このサブタイプの転写アイデンティティーを持つ同じマスターレギュレーター・タンパク質の異常活性を誘発することを示した。さらに研究では、マスターレギュレーターは、がん細胞の生存に必要ながんの主要な特徴を機械的に制御する、小さなハイパーコネクテッド・モジュール(マスターレギュレーター・ブロック)(MRB)内で作用することも示された。
Cell誌で報告された結果は、VIPER技術を使いがんの治療標的を特定する、独自のネットワークベースのアプローチの価値に関する、これまでで最も包括的な裏付けの1つとなった。後者は、コロンビア大学からDarwinHealthに商業利用の独占的使用権がライセンス供与されている。Cell誌は「これらのデータを総合すると、MRBが腫瘍の背景が異なっても同じがんの特徴を持つよう補完的な『分子レシピ』を提供している可能性があることを示唆している」と結論付けている。
Califano博士は「こうしたデータは、これまで考えられてきたよりはるかに大きい突然変異や小さな突然変異のレパートリーが、異常なMR活性の誘発と転写腫瘍アイデンティティーの発現の原因となっている可能性があるとの腫瘍構造上の仮説を裏付けている。この学際チームの発表結果で、腫瘍チェックポイントベースのマスターレギュレーターが、複数の機能的変異の影響を方向づける原因となる、がんの調節ボトルネックとなっていることも確認できた」と説明。さらに、「重要なのは、各サブタイプを決める腫瘍チェックポイントは、一握りの活性化および非活性化マスターレギュレーター・ブロックの極めて特異な組み合わせ、具体的には今回の研究で特定された24に分解できる。MRBは、腫瘍細胞の転写アイデンティティーの発現、維持に必要な補完的遺伝子プログラムを調節できる可能性があり、これにより、がん細胞の挙動の重要な側面が補強され、特定の薬剤や治療介入への感受性も決まってくる」と付け加えた。
本研究は、今回の分析で明らかになった変異の状態とは無関係に、112の腫瘍サブタイプのそれぞれに当てはまる多くのがん患者集団に利益をもたらす可能性のある、潜在的治療標的を特定するデータに基づくロードマップを提供する。このため執筆者らは「転写細胞の状態が遺伝子に比べて薬剤感受性のより正確な予測因子として浮上しているとの認識とも一致する今回の結果は、MRベースの解析が、遺伝ベースのアプローチの成果以上に、治療標的発見の可能性がより高い状況を生み出す可能性があることを示唆している」と指摘する。
今回の研究結果および計画中のフォローアップ研究は、がんの分類スキームの方向性を変え、精度ベースの創薬アプローチを多くの重要な点で進化させる可能性がある。Cell誌で報告された方法論と結果は、がんの研究、臨床コミュニティーに、がんのサブタイプ分類法の全く新しいアプローチを紹介した。それは、標準的な変異シグネチャーとは関係なく、基本的に標的となり得る腫瘍依存性を示現しているMRB特有の組成を持つダウンストリーム調節ボトルネックの組成に従って分類するというものである。実際、進行中の研究は、こうしたMRベースの腫瘍チェックポイントが、変異自体より信頼性の高いがん細胞制御のオフ・オンスイッチであることを示唆している。従って、このデータに基づく、がん細胞の挙動および治療標的の感受性を左右する分子種(すなわち、腫瘍チェックポイントを構成するMRタンパク質)の新たな分類法は、多様な研究や応用に道を開くパラダイムシフトであり、がん患者の臨床ケアの最前線にも相応の影響を与えるだろう。
DarwinHealthの最高経営責任者(CEO)、Gideon Bosker博士は「Cell誌に発表された新たな分子分類法は、「調節ネットワーク制限」、つまり、がん細胞の状態を維持および永続化するチェックポイント制御プログラムの形成を無効化または阻害する状態を誘発する可能性のある薬剤を特定し試験する前提条件となる」と指摘する。
重要なのは、マスターレギュレーターの識別は、コロンビア大学のCalifano、Alvarez両氏が開発し、DarwinHealthに独占的にライセンス供与されたVIPER技術によって可能になったことである。VIPERを使用すれば、安価で簡単に入手可能な遺伝子発現プロファイルのタンパク質活性が、mRNAシーケンシングで測定するのと同様の正確さで測定できる。サーモスタットが室温を一定に保つのと同様に、マスターレギュレーターはVIPERに誘導され、複雑な自動調整モジュールと合体し、腫瘍チェックポイントになる。これは、がん細胞がプログラム通りの悪性状態を長期間維持するのに必要かつ十分である。
DarwinHealthのCSO、Alvarez博士は「腫瘍チェックポイントを構成するマスターレギュレーター・タンパク質の協調活性は、がん細胞に必要な重要な特徴的プログラムを活性化する。それらの中には歯止めのない増殖、転移、転移性進行を制御しているものがあり、プログラムされた細胞死(つまりアポトーシス)や免疫系検知、さらに本来であれば腫瘍形成を妨げるその他の機能を抑制するものもある。本質的には、遺伝情報や変異情報を別々のダウンストリーム調節ネクサスに伝達することで、腫瘍チェックポイントのマスターレギュレーターは、がん細胞の生物学的・挙動的特徴を示現させ、維持している」と説明する。
Bosker博士は「DarwinHealthでは、研究者や共同創業者が独自に開発した、特許取得済みのVIPERベース技術をフルに活用し、マスターレギュレーターの活性を高い正確性、再現性で数値化している。当社は現実世界で実際に使える精密腫瘍学の観点から、腫瘍チェックポイント全体あるいは特定のマスターレギュレーターの活性を反転させられる薬剤を特定する、DarwinOncoTreatやDarwinOncoTargetなどVIPERベースの個別診断検査を開発してきた。これらのアルゴリズムはニューヨークとカリフォルニアのCLIA認定を受けており、進行中のいくつかの臨床試験を含め、臨床使用されている」と説明した。HDAC6阻害剤リコリノスタットとNAB-パクリタキセルの組み合わせを採用したこの技術をベースとする初の臨床試験では、現在、査読中で、MedRxivで閲覧可能な最近の論文(medRxiv 2020.04.23.20066928)で報告されている通り、レスポンダーと非レスポンダーの予測がほぼ100%正確だったことが示された。
Cell誌の論文に記載された、DarwinHealthの腫瘍構造ベースの「遺伝子より深く掘り下げる」発見フレームワークと関連技術は、Cell誌の論文で発表した戦略に沿って、今後も実験と計算ベースの推論手法の相補的組み合わせを活用し、経験よりは完全に機械論的な根拠に基づき、新規のがん標的、有効な薬剤、バイオマーカーを同定していくだろう。
さらに、DarwinOncoMarker、Compound-2-Clinic(C2C)、新規がん標的イニシアチブ(NCTI)プラットフォームを含む同社の医薬品、新規がん標的発見プログラムにより、同社の研究者チームは、独立して、あるいはバイオ医薬品パートナーと協力して、がんの最も脆弱で不変的なスポット、より具体的には腫瘍チェックポイントがもたらす調節インターフェースを標的に研究を進めていくことができる。
こうしたDarwinHealthの技術や手法は、主要な科学、医学誌で既に広く公表されており、現在、世界中の数多くの臨床試験で評価が行われている。マスターレギュレーター・ベースの解析を使い、より実用的な治療標的を分析する自前の機能を活用することで、ひいては遺伝子ベースのアプローチだけでは達成できない、より効果的な薬剤を発見することで、こうした検証済みアプローチは、精密腫瘍学に比べ精度が劣り、多くが当初の期待に完全に応えられていない、従来の変異主体のアプローチに付きものの欠点に対処していくことが期待される。
▽DarwinHealth(ダーウィンヘルス)について
DarwinHealth:Precision Medicine Therapeutics for Cancer Medicineは、CEOのGideon Bosker医学博士とコロンビア大学システムバイオロジー学部長兼クライド・アンド・ヘレン・ウー化学システムバイオロジー教授のAndrea Califano教授が共同で創業した「がんの最前線」バイオテクノロジーに焦点を当てた企業である。同社の技術は、過去15年間にわたってCalifano研究室で開発され、コロンビア大学から独占的にライセンス供与されている。
DarwinHealthは、独自のシステムバイオロジー・アルゴリズムを活用し、事実上、全てのがん患者を、治療成果の上がる可能性が最も高い薬剤や薬剤の組み合わせと一致させる。Bosker博士は「逆に、同じアルゴリズムが、ヒトの悪性腫瘍の全スペクトルに対する未知の潜在力のある治験薬や化合物の組み合わせ、および新たながん標的に優先順位を付けることもできる。これは、化合物パイプラインの最適化と機序的に実行可能な新たながん標的と化合物・腫瘍アライメントの発見の両方を追求している製薬会社にとって極めて有益だ」と説明した。
DarwinHealthの社是は、システムバイオロジーに根ざした新たな技術を展開して、がん治療の臨床転帰を改善することである。その核となる技術であるVIPERアルゴリズムは、がんの実行可能な新種の治療標的であるマスターレギュレーター・タンパク質の密に結合したモジュールを識別できる。方法論は、以下の2つの補完軸に沿って適用される。まず、DarwinHealthの技術は、がん細胞の制御ロジックのより根本的かつ深い段階で、創薬可能な標的の体系的な識別、検証をサポート、当社と当社の研究パートナーが、根本的かつより普遍的な腫瘍の依存性と機序に基づく次世代の効能を引き出すことができるようにする。第2に、医薬品の開発と発見の観点から、マスターレギュレーターをベースとする潜在的に創薬可能な新たな標的とそうした標的のアップストリーム・モジュレーターの特定が同じ技術でできる。これは、腫瘍チェックポイントの解明とターゲティングに重点を置いたDarwinHealthの腫瘍構造アプローチが、精度重視のがん治療薬の発見と治療を前進させるために最も重要なソリューションとリポジショニング・ロードマップを提供する場所である。
DarwinHealthが採用している独自の精密医療ベースの手法は、同社の重要なコンピューターインフラを共同開発したDarwinHealthのCSO、Mariano Alvarez博士をはじめとする研究指導部が著した膨大な科学文献によってサポートされている。こうした独自の戦略は、コンピューター上、体外、体内分析のデータを統合することにより、がん細胞のゲノムワイドな制御およびシグナル伝達ロジックをリバースエンジニアリング、分析する機能を活用している。これにより、医薬品資産の正確な開発曲線を解明、加速、検証できるよう設計された完全統合型の薬物特性評価・発見プラットフォームを提供、臨床および商業化の可能性がフルに実現できる。詳細については、www.DarwinHealth.com を参照。
(1)Cell 184, 1-18, January 21, 2021 (print version)
(2)Cell (online pub, January 11, 2021), https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0092867420316172?dgcid=author
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