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妊娠中の高血圧性疾患の既往と認知症リスク上昇に関連性

Alzheimer’s Association
2022-08-05 15:13 1504

【サンディエゴ2022年8月5日PR Newswire=共同通信JBN】妊娠中の高血圧性疾患歴は、血管性認知症のリスク上昇や脳の老化加速と関連性があることが、3日、サンディエゴおよびバーチャルで開催されたAlzheimer's Association International Conference(R)(AAIC(R)) 2022(アルツハイマー病協会国際会議(R)(AAIC(R))2022)(Alzheimer's Association International Conference )での研究発表で明らかになった。

Vascular Dementia Graphic
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妊娠高血圧症候群(HDP)(慢性/妊娠高血圧症や妊娠高血圧腎症などの高血圧症状)は、その後の人生における心臓疾患と高い関連性があると言われてきたが、これらの疾患と認知を関連付ける研究は今日までほとんどなかった。AAIC 2022で発表された、主な研究成果は以下の通り。

*HDPの既往のある女性は、妊娠高血圧でなかった女性に比べ、その後の人生で血管性認知症(脳への血流を遮断または減少させる症状が引き起こす思考能力の低下)を発症する可能性が高い。

*HDPの経験、とりわけ妊娠中の高血圧は、妊娠15年後の認知機能低下加速の予測因子である白質病変と関連性があった。

*重度妊娠高血圧腎症の既往のある女性は、妊娠高血圧でなかった女性に比べ、脳にアルツハイマー病につながる変化を起こすベータアミロイドの血中濃度が有意に高かった。

病院で分娩する約7人に1人が罹患するHDPは、世界中の出産者や胎児の主要な罹患、死亡原因の1つである。こうした疾患は、黒人、中南米人、アジア太平洋諸島民、米先住民の人々の罹患率が不均衡なほど高い。

Alzheimer's Association(アルツハイマー病協会)の科学プログラム・アウトリーチ担当シニアディレクター、Claire Sexton博士は「これは、大規模な研究コホートで妊娠高血圧症候群と認知症を関連付けた初の長期的データの1つだ」「HDPの深刻な短期的、長期的影響を考えると、妊娠者と新生児の両方を守るための早期発見と治療が不可欠だ」と語った。

Sexton博士は「これらのデータは、出生前のケアと妊娠中の人々の健康状態の長期的モニターの重要性を浮き彫りにしている」「記憶や認知に何らかの変化を感じた人は、医療従事者と話し合いをすべきだ」とも語った。

HDPと血管性認知症リスク上昇に関連性

HDPとその後の人生における認知症との関連を探るため、ユタ大学病院家族・予防医学助教授のKaren Schliep博士(MSPH)と同僚らは、妊娠を経験した女性5万9668人を対象に後向きコホート研究を実施した。

高血圧の既往のある女性は、妊娠高血圧でなかった女性に比べ、出産年齢、出産年、出生数を考慮し調整した上での、原因を問わない認知症リスクが1.37倍高かった。HDPは、血管性認知症リスクの1.64倍増、その他の関連認知症リスクの1.49倍増と関連性があったが、アルツハイマー病との関連性はなかった。妊娠高血圧症と妊娠高血圧腎症/子癇が示した血管性認知症リスクへの影響度は同程度だった。

Schliep博士は「今回の結果は、アルツハイマー病や他のタイプの認知症と比較して、妊娠高血圧腎症が血管性認知症と最も高い関連性があるという従来の知見を裏付けた」「さらに、妊娠高血圧症候群の既往のある女性も、妊娠高血圧腎症の既往のある女性同様、血管性認知症リスクが高い可能性が示唆された」とも語った。

HDPと妊娠15年後の白質病変に関連性

HDPと長期的な脳血管の健康状態との関連性は確立されているため、オランダのエラスムス大学医療センターの疫学・産婦人科学部の博士課程に在籍中のRowina Hussainali修士と同僚らは、HDPと妊娠後15年の脳血管病変マーカーとの関連性の分析に狙いを定めた。

研究者らは、R世代研究から非高血圧妊娠の445人とHDPの93人の計538人を精査した。対象としたのは、出産予定日が2002年4月から2006年1月までの妊婦。15年後、これら女性の一部は磁気共鳴画像(MRI)検査を受け、脳組織の体積や、病変を知らせてくれるその他のマーカーが評価された

Hussainali氏とその研究チームは、HDPの既往がある女性は、妊娠高血圧でなかった女性に比べ、(脳組織のすり減りを示す)白質病変が38%多いことを発見した。この関連性は妊娠高血圧症の女性の場合でより顕著で、正常血圧で妊娠した女性と比べ、白質病変が48%多かった。梗塞や微小脳出血など、その他の脳病変マーカーでの差異は認められなかった。妊娠後の慢性高血圧の発症は、とりわけ妊娠高血圧症の既往のある女性で、こうした結果がより強く出た。

Hussainali氏は「これらのデータは、HDPの既往が、妊娠から15年後の脳の損傷、すなわち認知に永続的影響を及ぼす可能性のある損傷と関連性があることを明確に示している」「HDPの既往がある女性は、高血圧やその他の心血管系の危険因子の評価と治療を早期に受けるべきだ」とも語った。

妊娠高血圧腎症と脳炎症マーカーの上昇に関連性

妊娠高血圧腎症は、妊婦の最大5-8%が罹患する重度の妊娠高血圧症候群である(5-8% of pregnancies )。大量のデータが、妊娠高血圧腎症の既往のある女性は、後の人生において心臓病などの健康リスク因子を蓄積していることを示している。重度の妊娠高血圧腎症は、脳血管疾患の最も高いリスクと関連付けられてきたため、メイヨー・クリニックの博士研究員兼助教授のSonja Suvakov医学博士とそのチームは、脳細胞から放出される小胞(液体入りの小さな袋)が、同疾患を発症した妊娠から何年もたった女性から検出可能かどうかを調べた。

研究者らは、妊娠高血圧腎症の既往のある女性は、アルツハイマー病の特徴的な脳病変の1つを構成するタンパク質、アミロイドベータに対して陽性の細胞外小胞の濃度が有意に高いことを発見した。脳血管内皮の損傷や炎症のマーカーに対して陽性の細胞外小胞が有意に増えていることも分かった。同様に、ベータアミロイドの血中濃度も上昇していた。

Suvakov氏は「これらの研究結果は、妊娠高血圧腎症の既往のある女性は、認知能力に悪影響を及ぼす可能性のある神経血管損傷マーカーの数値が高いことを示している」「高血圧障害の既往が、生涯を通じて女性に与える神経変性や認知リスクを完全に理解するには、さらなる研究が必要だ」と語った。

▽Alzheimer's Association International Conference(R)(AAIC(R))(アルツハイマー病協会国際会議(R)(AAIC(R)))について

Alzheimer's Association International Conference(AAIC)は、アルツハイマー病および他の認知症に焦点を当てた世界中の研究者の世界最大の会合である。Alzheimer's Association International Conferenceの研究プログラムの一環であるAAICは、認知症に関する新しい知見を生み出し、重要な共同研究コミュニティーを育成するための触媒として役立っている。

AAIC 2022ホームページ:www.alz.org/aaic/ 

AAIC 2022ニュースルーム:www.alz.org/aaic/pressroom.asp 

AAIC 2022ハッシュタグ:#AAIC22

▽Alzheimer's Association(R)(アルツハイマー病協会(R))について

Alzheimer's Associationは、アルツハイマー病のケア、サポート、研究を専門とする世界的な任意の健康組織である。われわれの使命は、グローバルな研究を加速し、リスクの低減と早期発見を推進し、質の高いケアとサポートを最大化することにより、アルツハイマー病やその他全ての認知症根絶への道をリードすることである。われわれが思い描いているのは、アルツハイマー病やその他全ての認知症のない世界である(R)。alz.org(alz.org )を参照するか、800.272.3900に電話を。

*Karen Schliep, Ph.D., MSPH, et al.「What subtypes are driving the association between hypertensive disorders of pregnancy and dementia? Findings from an 80-year retrospective cohort study(妊娠高血圧症候群と認知症の関連性を高めているのは、いかなるサブタイプか?80年間の後向きコホート研究からの知見)」資金提供者:国立老化研究所、国立研究資源センター、国立がん研究所

*Rowina Hussainali, M.Sc., et al.「Hypertensive disorders of pregnancy and markers of vascular brain pathology after 15 years: a prospective cohort study(妊娠高血圧症候群と15年後の脳血管病変マーカー:前向きコホート研究)」資金提供者:妊娠高血圧腎症財団、クールシンゲル財団、エラスムス大学医療センター、エラスムス・ロッテルダム大学、オランダ健康研究開発機構、オランダ科学研究機構、健康・福祉・スポーツ省、青少年・家族省、欧州研究評議会

*Sonja Suvakov, M.D., Ph.D., et al.「Circulating extracellular vesicles of neurovascular origin are elevated in women with severe preeclampsia years after their affected pregnancies(重度妊娠高血圧腎症の女性は、発症した妊娠から何年もたってから神経血管由来の細胞外小胞の血中濃度が上がる)」

*** AAIC 2022のニュースリリースには、以下の要約で報告されている内容と一致しない最新データが含まれている場合がある。

提案ID:62343

タイトル:What subtypes are driving the association between hypertensive disorders of pregnancy and dementia? Findings from an 80-year retrospective cohort study(妊娠高血圧症候群と認知症の関連性を高めているのは、いかなるサブタイプか?80年間の後向きコホート研究からの知見)

背景:われわれは最近、HDPの既往がある女性はない女性に比べ、原因を問わない認知症、血管性認知症(VaD)、その他/特定不能の認知症の発症リスクが高いが、アルツハイマー病(AD)についてはそうでないことを発見した。ここでは、HDPのサブタイプとその後の人生における認知症との関連について評価する。

方法:ユタ州で単胎妊娠を1回以上経験した女性(1939-2019年)を対象に、後向きコホート研究を実施した。HDPの分類は出生証明書(文字列:1939-1977年、ICD9コード:1978-1988年、追加テキスト付きチェックボックス:1989-2013年)により行い、死亡証明書と入院記録を検証のため使用した。認知症の分類は、死亡、入院、メディケア記録を通じてICD 9/10コードを使用し評価した。HDP暴露女性(n=1万9989人)と非暴露女性(n=3万9679人)を5歳ごとの年齢群、出産年、妊娠時の出生数により1対2の割合でマッチさせた(図1)。Cox回帰モデルを使い、原因を問わない認知症と特定の認知症を発症したHDPサブタイプの調整済みハザード比(aHR)および95% CIを推定した。

結果: HDP妊娠の内訳は、妊娠高血圧腎症/子癇(65.9%)、妊娠高血圧症(33.5%)だった。残りのHDP症例は、HELLP症候群(0.6%)によるもので、症例数が少なく、ここでは評価しなかった。追跡期間中(1979-2019年)の認知症発生は4.1%で、そのうち70%がその他/特定不能、24%がAD、6%がVaDだった。妊娠高血圧腎症/子癇の既往がある女性は、未発症の女性と比べ、原因を問わない認知症のリスクが1.38倍高く、妊娠高血圧症の女性は、リスクが1.36倍高かった(表1)。認知症のサブタイプ別に見ると、妊娠高血圧腎症/子癇の既往のある女性は、その他/特定不能の認知症のリスクが1.51倍高く、妊娠高血圧症の女性は、リスクが1.31倍高かった。妊娠高血圧症とVaDの関連性の高さは2.75で、1.58だった妊娠高血圧腎症/子癇のほぼ2倍だった。HDPのサブタイプは、ADとは関連性がなかった。

結論:今回の結果は、他の認知症サブタイプと比較して、妊娠高血圧腎症がVaDと最も高い関連性があることを明らかにした、デンマークで実施されたこれまでで最大の研究結果と一致している。さらに今回の結果では、妊娠高血圧症の既往がある女性のVaDリスクは、妊娠高血圧腎症の既往がある女性と同様に高い可能性も示唆された。

発表著者

Karen Schliep, Ph.D., MSPH

ユタ大学、米国

提案ID:62354

タイトル:Hypertensive disorders of pregnancy and markers of vascular brain pathology after 15 years: a prospective cohort study(妊娠高血圧症候群と15年後の脳血管病変マーカー:前向きコホート研究)

背景:妊娠高血圧症候群(HDP)と長期的な脳血管の健康状態との関連を示唆する証拠は十分にある。われわれは、妊娠15年後のHDPと脳血管病変マーカーとの関連性の追究を目指した

方法:本研究は、妊娠初期から追跡した人口ベースの前向きコホートに組み込まれた、入れ子型コホート研究である。538人の女性を対象とし、妊娠初期に正常血圧だったのが445人(82.7%)、妊娠初期にHDPだったのが93人(17.2%)だった。妊娠から15年後(中央値14.6、90%レンジ 14.0; 15.7)、女性の平均年齢は46.5歳(SD = 4.2)だった。これらの女性は、脳血管性病変のマーカーである脳組織の体積ならびに白質高信号域(WMH)、ラクナ梗塞、微小脳出血を評価するため、磁気共鳴画像(MRI)検査を受けた。

結果:HDPの既往のある女性は、妊娠中に正常血圧だった女性と比べ、WMHの体積が38%(95% CI:[8%;75%])大きかった。この関連性は、妊娠高血圧症の女性ではより顕著で、妊娠中に正常血圧だった女性に比べ、WMHの体積が48%(95% CI:[11% ; 95%])大きかった。梗塞や微小脳出血での差異は認められなかった。妊娠後の慢性高血圧の発症は、とりわけ妊娠高血圧症の既往のある女性で、こうした結果がより強く出た。

結論:HDPの既往は、妊娠15年後のWMH負荷の高まりと関連していた。この結果は、妊娠高血圧症の既往のある女性でより顕著だった。妊娠後の慢性高血圧の発症が、この結果に寄与していた。HDPの既往のある女性は、高血圧やその他の心血管系の危険因子の評価と治療を早期に受ける必要がある。

発表著者

Rowina Hussainali, M.Sc.

エラスムス大学医療センター、オランダ

提案ID:62360

タイトル:Circulating extracellular vesicles of neurovascular origin are elevated in women with severe preeclampsia years after their affected pregnancies(重度妊娠高血圧腎症の女性は、発症した妊娠から何年もたってから神経血管由来の細胞外小胞の血中濃度が上がる)

背景:妊娠特異的な高血圧疾患である妊娠高血圧腎症(PE)は、後の人生における脳卒中リスクの上昇、認知機能の低下、脳体積の縮小と関連付けられてきた。重度のPEは、脳血管疾患の最も高いリスクと関連付けられてきたため、われわれは、持続的な神経血管損傷やアミロイドベータのマーカーである神経血管由来の細胞外小胞(EV)は、重度のPEから何年もたった女性の血中で検出可能だろうとの仮説を立てた。

方法:正常血圧の妊娠歴のある女性40人(対照群)と、軽度PE(n=33人)および重度PE(n=7人)の既往のある女性40人の、年齢と出生数をマッチさせたコホートが、ロチェスター疫学プロジェクトを利用して同定された。重度PEは、臨床的基準に基づいて診断された(表)。どの女性にも主要心血管イベントはなかったが、このコホートを対象にわれわれが以前行った研究で、妊娠高血圧腎症の既往があったり、晩年に高血圧症になった女性は、他の群と比較して灰白質の総体積が小さいことが示されている。神経血管細胞の活性化に由来する血中のEVは、標準的なデジタルフローサイトメトリーによって測定された。アミロイドベータの血漿濃度は、ELISA法で測定された。群間差は分散分析(ANOVA)で分析し、事後解析には最小差分析を使用した。EVとMRI脳画像との関連は、ピアソン相関係数で評価した。

結果:重度PE既往のある女性では、アミロイドベータを運ぶEVの濃度が対照群と比較して有意に高かった(p=0.003)。血液脳関門内皮障害マーカー(LDL-R)および炎症性凝固経路活性因子(組織因子)に対して陽性のEVは、軽度PE既往のある女性だけでなく、重度PE既往のある女性でも、対照群と比較して有意に多かった(それぞれ、p=0.008およびp=0.002)。総アミロイドベータの血漿濃度も、軽度PE既往のある女性と比べ、重度PE既往のある女性が有意に高かった(p=0.037)(表)。組織因子に対して陽性のEVの数は、灰白質の総体積(cm3)と逆の相関関係があった(p<0.05)。

結論:重度PE既往のある女性は、神経炎症および神経血管損傷マーカーの数値が高く、アミロイドベータの分泌も多いことが示された。過度の炎症は、既に報告されている、こうした女性の脳萎縮の一因なのかもしれない。

発表著者

Sonja Suvakov, M.D., Ph.D.

メイヨー・クリニック、米ミネソタ州

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ソース: Alzheimer’s Association