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幼少期の厳しい社会経済状況、継続的な低賃金は認知症のリスクおよび記憶力のより速い低下に関連

Alzheimer's Association International Conference (AAIC)
2022-08-03 00:15 1140

【サンディエゴ202283PR Newswire=共同通信JBNAlzheimer's Association International ConferenceR)(AAICR))20222022年アルツハイマー病協会国際会議(R)、AAICR))(Alzheimer's Association International Conference )が米サンディエゴおよびバーチャルで開催された。AAIC 20223日に報告された複数の研究によると、不利な周辺環境や持続的な低賃金などの社会経済的な困窮は、より高い認知症リスク、より低い認知能力と記憶力の低下の速さに関連している。

Lower Socioeconomic Status Linked to Dementia | AAIC | alz.org
Lower Socioeconomic Status Linked to Dementia | AAIC | alz.org

 

社会経済状況(SESSocioeconomic Status)は、その人の労働経験や、個人または家族の経済的な資源へのアクセスや社会的地位など、社会的・経済的な尺度の両方を反映しており、身体的・心理的な健康や幸福の両方に関連する。それが認知症に及ぼす影響を検証する研究は増え続けており、AAIC 2022で発表された主な結果は以下の通り:

*厳しい社会経済的困窮-収入・財産、失業、車・家の所有、世帯の過密状態を用いて測定-を経験している人は、遺伝子リスクが高い社会経済的地位の良好な人に比べても、認知症を発症する確率が有意に高い。

*黒人およびラテンアメリカ人において、地域の資源が低品質であること、および必需品への支払いが困難であることは、認知テストのスコアが低いことと関連していた。

*親の社会経済状況が良好なほどアルツハイマー病のマーカーであるptau-181の負の影響に対する回復力が増し、ベースライン実行機能が良好で、加齢による認知機能の低下が遅くなった。

*高賃金を稼ぐ労働者と比べ、持続的に低賃金を得ている労働者は、加齢による記憶力の低下が著しく早かった。

 Alzheimer's Associationの健康指針担当バイスプレジデントであるMatthew Baumgart氏は「社会経済的な状況を含めて、認知に関連する健康の社会的決定要因の研究を続けることは、すべての人の健康と幸福を改善できるような公衆衛生政策の実施や地域社会の環境づくりに不可欠である」と述べた。

このほど開催されたAlzheimer's Association Promoting Diverse Perspectives: Addressing Health Disparities Related to Alzheimer's and All Dementias(アルツハイマー病協会・多様な視点を促進する:アルツハイマー病と全ての認知症に関連する健康格差への取り組み)(Promoting Diverse Perspectives: Addressing Health Disparities Related to Alzheimer's and All Dementias )会議では、研究者が集まり、社会経済状況などの認知症リスクの社会的な決定要因を含む、重要な健康の公平性の課題に関する知識を共有し、協力を前に進めた。

認知症リスクの増大に関係する社会経済的困窮

認知機能障害や認知症のリスクは、人が生まれ、成長し、生活し、働き、年をとる環境によって、かなりの程度決定されるということが研究者たちの間で理解され始めている。認知症を発症する社会的条件と遺伝的リスクがどのように相互作用するかをよりよく理解するために、ルクセンブルク大学心理学部学生のMatthias Klee博士と研究チームは、エクセター大学およびオックスフォード大学の研究者と共同で、英バイオバンクの196368人の参加者記録からのデータを調査し、認知症の遺伝的リスクをリスクスコアで評価した。

このサンプルを使って、低所得や低資産といった個人の社会経済的困窮と、就業率や車・家の所有といった地域レベルの社会経済的困窮が認知症発症リスクにどのように関係するかを調べ、認知症の遺伝的リスクと比較した。

Klee氏とチームはAAIC 2022で以下の通り報告した:

*個人の社会経済的困窮と地域レベルの社会経済的困窮の両方が認知症リスクに寄与する。地域レベルの社会経済的困窮は、非常に不利な地域に住む人々の認知症リスク上昇と関連していた。

*遺伝的リスクが中程度または高い参加者では、個人レベルの社会経済的条件を調整した後において、地域レベルの貧困が大きいほど、認知症発症のリスクがさらに高くなることが示された。

*画像マーカーを用いた分析では、個人レベル、地域レベルともに社会経済的な困窮が、脳の老化や損傷を示すマーカーである白質病変の負荷の高さと関連していた。

Klee氏は次のように述べた。「われわれの研究結果は、認知症の発症リスクにおいて、特に遺伝的に脆弱な人々では生活、仕事、加齢の条件が重要であることを指摘している。個人の健康行動および影響されない生活環境の両方が、特に遺伝的脆弱性が高い個人の認知症リスクを明らかにすることに関連している。この知見は、公衆衛生の介入によってだけでなく、政策立案による社会経済的条件の向上によって、認知症の罹患者数を減らすための新しい機会を開くものである」

経済的逆境と不利な環境は、認知テストの低スコアと関連する

多くの研究により、SESは後の生活における認知症のリスクに影響を与えることが示されている。SESは、健康研究で一般的な要因として教育年数や所得水準を用いて研究されることが多いが、認識された近隣環境や資源へのアクセスといった主観的指標が認知の健康にどのような役割を果たす可能性があるかはまだ分かっていない。

この関係をよりよく理解するために、テキサス大学サウスウェスタン校の臨床心理学博士候補であるAnthony Longoria氏(理学修士)は、Dallas Heart Study3858人のさまざまな個人を対象とした認知の評価(モントリオール認知評価スコア)と共に、近隣の物理的環境の認識とSESの認識を調査した。

研究者らは、黒人およびヒスパニック系の参加者において、質の低い近隣資源、食料・暖房や医療へのアクセスの悪さ、暴力にさらされることが、一般的に用いられる認知機能テストの得点の低さと関連していることを発見した。これに白人は含まれていない。

Longoria氏は「マイノリティグループは経済的な逆境や周囲の不利な状況を不公平に経験し、さらに認知症と診断されやすく、タイムリーなケアをあまり受けられないことを考えると、これは重要なことである」と述べた。

追加データ解析により、認識された周囲の不利な状況や経済状態も、認知症リスクや血管性因子と関連する脳の白質体積(WMV)や高信号域(WMH)に影響を与える可能性があることが示された。報告された低所得と教育は、サンプル全体においてより高いWMHと関連し、信頼の低さ、医療へのアクセス、所得、教育は、より低い脳内WMVと有意に関連した。黒人女性では「暴力」がより多くのWMHと関連し、ヒスパニック系男性では「信頼」の低さがより低いWMVと関連し、白人女性では「医療へのアクセス」の低さがより低いWMVと関連した。

Longoria氏は「科学者と政策立案者は、アルツハイマー病および関連する認知症の地域リスクを軽減するための公衆衛生政策を策定する際に、安全性、高品質な食品へのアクセス、清潔な屋外スペース、ヘルスケアなど、近隣リソースの改善を強調すべきである」と述べた。

親の社会経済状況は、のちの人生におけるアルツハイマーの病変の影響を軽減することに関係する

神経変性の生物学的マーカーを含む認知回復力に社会経済的条件が与える影響については、これまでほとんど研究されていない。この研究のために、コロンビア大学アービング医療センター神経心理学教授のJennifer Manly博士とそのチームは、ニューヨーク市の人口集団を代表する世代間研究の参加者と提携し、教育年数で測定した親の社会経済状況が、血漿ptau-181(脳の老化とアルツハイマー病のマーカー)レベルとの関連を和らげるかどうかを調査した。また、中年成人の記憶力の変化と関連があるかどうか、アルツハイマー病および関連する脳の変化の緩和が人種・民族グループ間で同様であるかどうかも調査した。

AAIC 2022で報告した通り、Manly氏とチームは親の社会経済状況が良好なほど、アルツハイマー病のマーカーであるptau-181が子供の加齢に応じて記憶、言語、実行機能に与える影響を軽減することと関連することを明らかにした。

Manly氏は「われわれの多民族・世代間研究からのエビデンスは、幼少期の社会経済的条件が、アルツハイマー病に関連した脳の変化に対する認知的予備能力を促進する可能性を示唆している。これらのデータは、質の高い教育へのアクセスなどの構造的かつ政策主導の投資が、いかに世代間に影響を及ぼすかを示している。幼少期の貧困を減らす介入をすれば、アルツハイマー病に関連する格差を縮めることができる可能性がある」と述べた。

高齢では、低い時給は記憶力の急速な低下に関係する

低所得が健康に及ぼす影響に関する研究は急速に広がっている。コロンビア大学メールマン公衆衛生大学院のKatrina Kezios博士(博士課程研究員)らのチームは、長期間にわたって低い時給で働くことが記憶の低下と関連しているかどうかを調べるため、中年期に有給で働いていた米国人成人を対象とした全国縦断研究のデータを使用した。

Kezios氏とチームは研究参加者の低賃金の経歴を(a)低賃金を得たことがない人(b)断続的に低賃金を得た人、または(c)常に低賃金を得ていた人に分類し、12年間にわたる記憶力の低下との関係を調べた。

研究者たちは、低賃金だったことが全くない人に比べ、持続的な低賃金所得者は高齢になってからの記憶力の低下が著しく早いことを発見した。彼らには10年ごとに約1年分多くの認知機能老化があった。言い換えれば、持続的低賃金労働者が10年間に経験する認知機能老化のレベルは、低賃金労働者でなかった人が11年の間に経験するレベルに相当するのである。

Kezios氏は「われわれの研究結果は、最低賃金の引き上げを含め、低賃金労働者の経済的な安心を高める社会政策が、認知的な健康にとって特に有益である可能性を示唆している」と述べた。

Alzheimer's Association International ConferenceR)(AAICR))(アルツハイマー病協会国際会議(R)、AAICR))について

Alzheimer's Association International ConferenceAAIC)は、アルツハイマー病および他の認知症に焦点を当てた世界中の研究者の世界最大の会合である。Alzheimer's Associationの研究プログラムの一環であるAAICは、認知症に関する新しい知見を生み出し、重要な共同研究コミュニティーを育成するための触媒として役立っている。
AAIC 2022ホームページ:www.alz.org/aaic/
AAIC 2022ニュースルーム:www.alz.org/aaic/pressroom.asp
AAIC 2022ハッシュタグ:#AAIC22

Alzheimer's AssociationR)について

Alzheimer's Association(アルツハイマー病協会)は、アルツハイマー病のケア、サポート、研究に取り組む世界的な自主的保健組織である。その使命は世界的な研究を加速し、リスク軽減と早期発見を推進し、質の高いケアとサポートを最大化することによって、アルツハイマー病とその他の全ての認知症の根絶に道を開くことである。われわれが思い描いているのは、アルツハイマー病やその他の全ての認知症のない世界(R)である。alz.orgalz.org )を参照するか、電話800.272.3900に連絡を。

 

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ソース: Alzheimer’s Association