【ランカスター(米カリフォルニア州)2021年7月20日PR Newswire=共同通信JBN】
*日本の浪江町長とカリフォルニア州のランカスター市長が、水素の製造、貯蔵、配送と役所施設や地域での最終使用を約束する「スマート姉妹都市」関係づくりに向け動き出した。これは、水素エネルギーにとって歴史的瞬間である。
2人の首長は20日、それぞれの都市で覚書(MOU)に署名し、世界で初めて水素をグリーンエネルギー戦略として活用する自治体間協定に向けた取り組みを開始した。日米同時開催のオンラインイベントには、カリフォルニア州選出のAlex Padilla上院議員、Eleni Kounalakisカリフォルニア州副知事、日野由香里・資源エネルギー庁新エネルギーシステム課長など、地球環境問題の要人が出席した。水素中心のスマート姉妹都市関係の構想は、2020年7月の武藤顕・駐ロサンゼルス総領事とRex Parrisランカスター市長の昼食会で最初に提案された。
Padilla上院議員は、両都市の水素利用にまつわる知識、人脈、成功事例、経済開発戦略共有のための協力に加え、水素利用のためのユニークなコラボレーションを行っていることに祝意を表した。同議員は「両都市は、革新的技術と国際協力によって炭素排出量を削減する戦いをリードしている」と述べ、カリフォルニアが長年、気候危機解消と気候正義推進のリーダーだったと指摘。「上院環境・公共事業委員会のメンバーとして、持続可能なエネルギー源への移行に向けた大胆な行動を支援することを約束する」と語った。
2011年3月11日の福島第一原子力発電所の悲劇からの復興途上にある福島県浪江町では2020年、太陽光エネルギーで稼働する世界最大級の水素製造施設(福島水素エネルギー研究フィールド、略称「FH2R」)の建設が完了した。経済産業省(METI)の宮下正己・福島復興推進グループ担当室長は「FH2Rは、浪江をイノベーションの中心とする福島の復興の象徴だ」と語った。
吉田数博・浪江町長は、水素は東京オリンピックの中心テーマ「復興と卓越性」にマッチするとした上で、「浪江の水素がオリンピックのトーチや聖火、公式燃料電池車の燃料に使われているのは大変うれしい。われわれは、関係者の皆さんの協力を得て、浪江が地元で生産されたカーボンフリーの水素を利用して、水素社会を先導する町になれるよう頑張っている」と語った。吉田氏は、町の取り組みには公用車の燃料電池車化や水素サプライチェーン確立のための実証研究の実施が含まれていると説明した。
ロサンゼルスの北方70マイルに位置する都市、カリフォルニア州ランカスターは、クリーンエネルギー・イノベーションのハブでもある。ランカスター市は2009年以降、20億ドルを超える太陽光投資を呼び込み、独自のグリーンエネルギー市営事業を展開、2019年には米国初の「ネットゼロ」都市となった。Parrisランカスター市長は「本市は現在、複数の水素関連企業の投資を受け入れており、水素を中心としたさらに明るい未来を構想している」と語った。
ロサンゼルス郡スーパーバイザーのKathryn Barger氏は、今回のパートナーシップはランカスター市とロサンゼルス郡が重要リソースの提供に参画する歴史的チャンスだと強調。「浪江でつくられた水素が来たる東京オリンピックで使われるように、ランカスターでつくられた水素が2028年のロサンゼルス・オリンピックの燃料に使われるのが私の願いだ」と語った。
武藤総領事は、将来の水素社会づくりに取り組むことの重要性を強調。「日本と米国は多くの分野で自然な同盟関係にある。この2つの未来志向都市のコラボレーションを皮切りに、水素の製造と最終消費の両方が十分に検討され、このエキサイティングな関係が、太平洋の両側で水素エネルギーのバリューチェーンと水素社会の構築に向けた道筋を示すことになるよう期待している」と語った。
浪江とランカスターは、それぞれの水素ロードマップを改良し、経験を共有することで多くのことを学んできた。役所の担当者は毎月、オンラインで会議を開いている。日本貿易振興機構(ジェトロ)ロサンゼルス事務所の佐伯徳彦次長は「両都市は、お互いの歴史、文化、そして水素の日常生活への組み込み方を学んでいる。われわれも、日本企業との対話を促進する」と語った。
ランカスター市に10年間の水素マスタープランについて助言している多国籍廃棄物・エネルギー企業Hitachi Zosen Inova(HZI)のシニア・プロジェクトデベロッパーLex Heslin氏は、ランカスターの自治体間プログラム開発も支援した。Heslin氏は「水素戦略を実行に移し、水素つまり「H2」プロジェクトやインフラへの投資を促進する、どこででも再現可能な具体的手順を示すことができた」と語った。内容は以下の通り。
*市の所有地を使った支援
*認可支援
*役所の調達をツールとして活用
*インセンティブの提供
*助成金申請支援
*連邦政府機関、学界、民間企業、非営利団体、コミュニティーグループの取りまとめ
*H2プロジェクトを監督し目標を達成するため、役所内の役割の明確化
国立研究開発法人、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の大平英二・次世代電池・水素部統括研究員は、世界的な傾向を見れば、両都市が新たなパートナーシップから得るものは大きいだろうと指摘。「水素はカーボンニュートラル実現の鍵であり、とりわけ再生可能エネルギーの潜在力を最大限に引き出すには重要だ。地域リソースの活用を前提とした地域エネルギーモデルの構築が必要で、両都市の知識や経験の相互活用は効果的だ」と語った。
Kounalakisカリフォルニア州副知事は、水素のパイオニアである日本とカリフォルニアの理想的協力関係樹立を歴史的合意と断言。「日本とカリフォルニアは共に、クリーンエネルギーの未来につながる道をリードしている。気候危機は地球規模の危機であり、気候変動に対処するには都市レベルを含むあらゆるレベルの政府間パートナーシップが不可欠だ。カリフォルニアには、米国で最も多くの水素自動車と水素燃料ステーションがある。経済の脱炭素化に伴い、水素は輸送や産業に必要な重要なエネルギー源になるだろう」と語った。
Parris市長は、スマート姉妹都市プログラムは今後、あらゆる規模の自治体が水素ロードマップを採用する際の枠組みになる可能性があると示唆。「自治体には、意思決定に影響を与え、環境を改善できる、とてつもなく大きな力がある。彼らが、あらゆる都市に新たなチャンスを約束する、この信じられないほどスマートな燃料に移行してくれることを期待している」と語り、近い将来、同プログラムに参加する都市が増えるだろうと付け加えた。