【台北2021年11月29日PR Newswire】11月26日に開催された第14回アジア太平洋薬理学者連盟(APFP)台北大会で、ノーベル賞と唐奨(Tang Prize)受賞者の本庶佑教授が行った示唆に富むオープニングスピーチ「がん免疫療法の将来展望(Future Perspective of Cancer Immunotherapy)」に引き続き、11月27日午後1時30分(GMT+8時間)から、唐奨教育基金会(Tang Prize Foundation)と台湾薬理学会(Pharmacological Society in Taiwan)の共催で「2020年唐奨受賞者によるバイオ医薬科学講演会」が開催された。台北医学大学理事長のWen-Chang Chang博士と台北医学大学教授のYun Yen博士が共同司会を務めたこの特別セッションでは、2020年の唐奨バイオ医薬科学賞を受賞したCharles Dinarello、Marc Feldmann、岸本忠三の3博士が講演を行い、サイトカインが炎症やCOVID-19疾患に果たす役割や可能な治療法について貴重な情報を提供した。
Dinarello博士による最初の講演は「インターロイキン-1:全身および局所的な炎症の主要なメディエーター」と題され、同博士が1971年にヒトの白血球から白血球性発熱物質を抽出したところから始まった。博士はそこから6年の歳月をかけて、後にIL-1αとIL-1βと命名される2つの発熱分子を同定した。その研究成果は1977年、米国科学アカデミー紀要に掲載された。2番目に講演したFeldmann博士は、「自己免疫に関する分子的知見を効果的治療につなげる」とのテーマで見解を述べた。講演の前半は、抗TNFが関節リウマチの治療に有効であることを発見した経緯に重点が置かれた。講演の後半では、TNFには、炎症を引き起こすTNF受容体1(TNFR1)と、それと正反対の働きをするTNF受容体2という2つの異なる標的があることを教えてくれた。従って、それらは「ツールを生成する過程にあり」、制御性T細胞の機能を変えることなく既にTNFR1を阻害しているのである。3番目に「インターロイキン-6:関節炎からCAR-T、COVID-19まで」と題して講演した岸本博士は、IL-6の発見の経緯、IL-6が多面的な分子であり、抗体産生と炎症誘発の両方の原因となっている理由を聴衆に説明してくれた。また、IL-6の自己免疫疾患への影響や、IL-6がサイトカインストームを引き起こす仕組みについても明らかにした。
唐奨教育基金会は、最先端のバイオ医薬科学を一般の人に理解してもらえるよう、この3つの講演を後刻、公式ウェブサイト(https://www.tang-prize.org )で公開する予定。