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アジア太平洋地域の生物多様性と自然損失危機を覆せば4兆3000億米ドル相当のネーチャーポジティブなビジネスチャンスが生まれる

Temasek
2021-10-05 15:27 2112

【シンガポール2021年10月5日PR Newswire=共同通信JBN】

*AlphaBeta、Temasek、世界経済フォーラムの新たな調査は、アジア太平洋地域のGDPの63%、19兆5000億米ドルが生物多様性や自然損失の脅威にさらされていると推定

*同調査は、2030年までにアジア太平洋地域で4兆3000億米ドルの事業価値を生み出し、年間2億3200万人の雇用を創出できる59のネーチャーポジティブなビジネスチャンスも特定

世界で他に類を見ないほど固有の生物多様性が豊かなアジア太平洋地域は、生物多様性と自然損失危機のただ中にある。同地域は、自然資本枯渇のホットスポットが世界で最も集中している地域で(注1)、このままの状況が続けば、東南アジアの全生物種の最大42%が失われ、そのうち半分が世界的絶滅となる可能性がある(注2)。アジア太平洋地域の持続可能な未来を実現するにはシステムを変える必要があり、革新的ソリューションはわれわれと地球との関係をリセットするのに必要な投資を引き出すことができる。

TemasekとEcosperity Week 2021のロゴ
TemasekとEcosperity Week 2021のロゴ

29日、Ecosperity Week 2021で発表されたAlphaBeta、Temasek、世界経済フォーラムの新たなレポート「新しい自然経済:アジアの次の波(New Nature Economy: Asia's Next Wave)」には、こうした調査結果が盛り込まれている。本レポートは、ネーチャーポジティブな経済のリスク、チャンス、必要資金の調達を探ることで、同地域におけるネーチャーポジティブなソリューションの事業例を提示している。

▽自然への脅威はビジネスへの脅威

アジア太平洋地域では、以下の3つの主要な社会経済システムが自然に対する最も大きな脅威となっているが、同時にネーチャーポジティブな経済成長の最も大きなチャンスも提供している。これらのチャンスの価値は総額4兆3000億米ドルで、2019年のアジア太平洋地域のGDPの14%に相当する。

*これまで通りのやり方で食料、土地、海洋利用システムを持続していくのは不可能である。2050年には55億人になると予測されている同地域の人口を維持するには、農業や漁業の方法と消費する食料や衣服の量の両方を変えることが必須である(注3)。

われわれは、自然の生態系がうまく回っていけるよう、人の手が入っていない土地や水の量を増やすことで自然を「残して」おくとともに、土地や水の使用を生物多様性がより維持しやすい形で行うことで、空間を自然と「共有」する必要がある。この2つの目的を達成するには、28のビジネスチャンスを実行に移し、拡大する必要があるが、それにより1兆6000億米ドル超の事業価値と約1億1800万人の雇用の創出が可能になる。

*都市化は、インフラや建築環境の急速でしばしば無計画な拡大を促進し、自然と人間の両方に大きな悪影響を与えてきた。アジアには現在、最大の環境リスクに直面している上位100都市のうち99都市があり(注4)、一層の都市化が進む中、建築環境が生物多様性や自然損失に与える影響は、放置すれば大きくなる一方であろう。

建築環境は、周囲の自然環境への悪影響を是正しつつ、自然や野生生物により優しいものにする必要がある。これを達成するには、16のビジネスチャンスを実行に移し、拡大する必要があるが、それにより1兆2000億米ドル以上の事業価値と約6500万人の新規雇用の創出が可能になる。

*エネルギー・採掘システムは、この地域の成長の重要な原動力となってきたが、エネルギー、電力、産業は、合わせるとアジア太平洋地域の温室効果ガス排出量の79%を占めている。同地域で脱炭素目標を達成しつつ、エネルギーを安定的に提供することは大きな課題で、地球でとり得る手段の範囲内で同地域のニーズを満たすには、エネルギー・採掘システム全体を根本的に見直す必要がある。

われわれは、消費効率を高めて資源の採掘量を減らし、資源の採掘方法を改善して生態系への影響を最小限に抑え、生態系にこれ以上悪影響を与えずに再生可能エネルギーに移行する必要がある。これらを達成するには、15のビジネスチャンスを実行に移し、拡大する必要があるが、それにより1兆4000億米ドル超の事業価値と約4900万人の新規雇用の創出が可能になる。

これら3つのシステムにまたがる計59のネーチャーポジティブなビジネスチャンスを引き出すには、年間1兆1000億米ドルの投資が必要である。相当な額ではあるが、アジア開発銀行の加盟45カ国がCOVID-19パンデミック対策として発表した31兆1000億米ドルに比べれば、ごくわずかだ(注5)。

Temasekの最高サステナビリティー責任者のSteve Howard博士は「最悪の結果を回避するには、2030年までに二酸化炭素排出量を半減させ、自然損失の逆転を開始しなければならないが、これは、経済的に自立し、回復力のある新たなビジネスモデルなら達成できる。経済・投資界は、政府や市民社会と協力し、人と地球と経済のためになる成長促進を支える資金の確保に努めなければならない」と語った。

▽ネーチャーポジティブな社会への移行に向けた投資促進に必要なイノベーションとコラボレーション

本レポートのために実施した独自の調査で、アジア太平洋地域の投資家やビジネスリーダーは、ネーチャーポジティブなビジネスモデルを追求する上で克服すべき主要課題を挙げた。これらの課題は、規制問題、市場障壁、情報ギャップ、投資をサポートする成功要因の欠如の4領域に大別できる。

これらの障害を克服するため、企業やコミュニティーのリーダーたちは、今後10年間に必要な投資を活性化するための様々な革新的ソリューションを提案した。トップ3の提案は以下の通り。

*自然資本と環境外部性の真のコストを把握するための新たな外部性価格決定モデル

*生物多様性目標に対する説明責任を果たさせるための生物多様性報告の統一基準

*ブレンド・ファイナンス・モデルなどの新しい金融商品やメカニズム並びに、既存および将来の環境基準順守を義務付ける規制

ネーチャーポジティブな経済への投資を可能にする環境づくりには、さらなる研究開発と官民対話が不可欠である。

世界経済フォーラム「自然行動アジェンダ(Nature Action Agenda)」責任者のAkanksha Khatri氏は「COVID-19のパンデミックは、人類と自然との関係の再考を迫る、切望されていたシステムショックだった。強靭な未来に向けた回復のためには、自然資本の保護、回復、持続可能な管理、生態系サービスの評価に、投資を適切に配分しなければならない。 われわれの調査や政府、民間部門、投資家、市民社会との関わりは、ネーチャーポジティブな経済に向けた新たな協力の道筋づくりの必要性を強調している」と語った。

AlphaBetaの創業者兼マネジングディレクターのFraser Thompson博士は「生物多様性と自然損失は、アジア太平洋地域の企業にとって最大の関心事で、これまで通りという選択肢がもはや存在しないことは、あらゆる証拠が示している。本レポートが、企業には事業の回復力を強化し、自然に積極的に恩返しするだけでなく、新たな成長のチャンスを生み出す道筋があることを示せたのは朗報だ。アジア太平洋地域の企業、政府、市民社会によるマルチステークホルダー・アクションは、このようなネーチャーポジティブなチャンスを生み出すことができる」と指摘した。

AlphaBeta、世界経済フォーラム、Temasekのレポートは、https://bit.ly/NewNatureEconomy からダウンロードできる。

▽AlphaBetaについて

AlphaBetaは、シンガポールに本社を置き、世界各国のクライアントにサービスを提供している戦略・経済助言業者である。

▽Temasek(テマセク)について

Temasekは、2021年3月31日現在、3810億シンガポール・ドル(2830億米ドル)の純資産価値を有する投資会社である。投資家、機関、管財人としての当社のチャーターの役割は、良いことをする、正しく行う、うまくいくために、投資スタンス、倫理、哲学を形作る。当社は、より良く、よりスマートで、より持続可能な世界の実現に資する投資やその他のチャンスを捉えつつ、現在および将来の課題に対処するための持続可能なソリューションを積極的に追求している。Temasekはシンガポールに本社を置き、世界各地に13のオフィスを構えている。Temasekの詳細については、www.temasek.com.sg を参照。

▽世界経済フォーラム(World Economic Forum)について

世界経済フォーラムは、世界の状況の改善を目指す、官民協力のための国際組織である。同フォーラムには、世界、地域、業界のアジェンダづくりのため、政治、ビジネス、その他各界のリーダーが参加している。www.weforum.org 

(注1)https://encore.naturalcapitalfinancealliance.org/map?view=hotspots 

(注2)https://www.fao.org/fileadmin/templates/rap/files/NRE/Forestry_Group/1_Forests_for_a_greener_future.pdf 

(注3)https://population.un.org/wpp/DataQuery/ 

(注4) https://www.maplecroft.com/insights/analysis/asian-cities-in-eye-of-environmental-storm-global-ranking/ 

(注5) https://covid19policy.adb.org/ 

ソース:Temasek

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Link:http://asianetnews.net/view-attachment?attach-id=402455 

(画像説明:TemasekとEcosperity Week 2021のロゴ)

ソース: Temasek