【マニラ(フィリピン)2021年1月15日PR Newswire=共同通信JBN】
*フィッチがフィリピンの格付けを「BBB」に据え置き、格付け見通しは「安定的」
フィリピン中央銀行(Bangko Sentral ng Pilipinas、BSP)によると、国際的格付け機関、フィッチ・レーティングスはこのほどフィリピンの投資等級信用格付けを「BBB」に据え置き、格付け見通しは「安定的」とした。COVID-19の危機にもかかわらず管理可能な財政状況と、毎日確認されるCOVID-19の症例数が減少する中での良好な成長見通しが理由としている。
「BBB」は最低投資等級を1段階上回っており、「安定的」見通しは短期的に格付け調整を引き起こす可能性のある要因がないことを示唆している。
フィリピンは信用格付け据え置きにより、パンデミックが多くの国々の経済の実績と信用プロファイルに与えた悪影響から生じた格付け引き下げの波の中を、国際金融界で際立ち続けている。
フィッチは2020年、33のソブリンに影響を与える51の信用格付け引き下げを実施した(一部のソブリンは複数回格下げされた)。これには、メキシコ、コロンビア、イタリアなど、かつてフィリピンと同じ格付けを持っていた国が含まれる。これらの国々の格付けは、最低投資適格である「BBB-」に1段階引き下げられた。
フィッチは11日公表したリポートで、フィリピンは「同レベルの国々に比べて政府債務水準は中程度であり、外部バッファーは堅調で、中期的成長見通しは依然として強い」と指摘した。フィッチはまた、フィリピンの今後数四半期の景気回復を予想し、国内総生産(GDP)成長率予測を今年は6.9%、来年は8.0%と見込んでいるとしている。
フィッチの決定に対し、フィリピン経済当局者トップのうち2人は、同国のCOVID対応措置の健全性、並びに強力なファンダメンタルズがパンデミックおよび堅調な中期的成長軌道に進入したことを認めたものだとして同国の信用格付け据え置きを歓迎した。
カルロス・G・ドミンゲス(Carlos G. Dominguez)財務相は「フィリピンの『BBB』格付け据え置きと『安定的』見通しは、同国が世界的なCOVID-19危機を通じて引き続き信用と投資に値することを示している」と語った。
ドミンゲス氏は「これは、第1に、ドゥテルテ(大統領)の下での力強い経済が、前例のない健康・経済危機に対処するのに十分な財政的余地を与えてくれたからである。第2に、命を救い、地域社会と生計を保護し、最も打撃を受けた家族、労働者、企業に救済を提供するという政府全体のアプローチがある。第3に、経済を復興させ、企業と消費者の両方の信頼を回復するためのCOVID-19対応策に多額の支出を開始するにあたり、われわれが慎重な財政・債務管理イベントへのコミットメントを継続したことがある」と付言した。
ドミンゲス氏は「2020年初めにパンデミックが発生するやいなや、ドゥテルテ政権は医療インフラを強化し、貧しい家族や失業者にこれまでで最大の緊急補助金を供与し、企業、特に零細企業、中小企業(MSME)に救済を提供することを目的とした2つの法律(バヤニハン1および2)の迅速な議会通過を提案、主導した」と語った。
同氏は「さらに政府は議会と協力し、企業業績回復・企業向け税制上の優遇措置(CREATE)法案の迅速な議会通過にも取り組んでいる。これと、議会で既に可決された金融機関戦略移転(FIST)法案は、経済活動を刺激し、パンデミックによる世界的経済不振からのフィリピンの回復を加速することを目指している」と付言した。
同氏は、政府は集団予防接種プログラムの実施を待つ間、調整されたベースで経済をさらに開放するために移動制限緩和を開始し、それによって企業が事業を再開または拡大し、個人消費を増やすことを可能にすると述べた。
フィリピン中央銀行(BSP)のBenjamin E. Diokno総裁は「われわれ全員が直面している世界的パンデミックの中で、フィッチがフィリピンの信用とマクロ経済の方向性を理解していることに感謝する。われわれに関する限り、BSPは昨年2月という早期に政策金利を引き下げて危機に対応した世界で最初の中央銀行の1つだった。十分な流動性と金融システムが効率的に機能することを確保するだけでなく、市場の信頼を高めるために迅速かつ断固たる行動をとる準備ができていることを市場に知らせることが重要であると考えた」と語った。
中銀総裁は「中銀は準備預金制度順守の一環として、零細、中小企業(MSME)への融資をカウントするなど、前例のない措置を含む多くの対応策を迅速かつ断固として実施した。BSPが他の政府とともに昨年下調べをしたことを考えると、国内での抗COVIDワクチン配布を楽しみにしているので、より良い日が来ると期待することができる」と述べた。
最新の政府予測に基づくと、フィリピン経済は2020年の景気後退から、今年は6.5-7.5%、来年は8-10%の成長に回復しよう。成長は政府支出によって支えられ、承認された国家予算は4兆5060億ペソで、これは前年比10%増で、GDPの21.8%に相当する。
2020年12月末現在、保健システム改善と、フロントライナーやMSME(零細、中小企業)などの脆弱なセクターに財政的支援を提供するバヤニハンIおよびIIの割り当てがリリースされ、5007億ペソに達した。
フィリピンで過去最大の企業向け刺激策となるCREATE法案は、法人税減税と政府の財政的インセンティブシステムの合理化を義務付ける。同法案については下院と上院が別々の独自法案を承認したことを受け、すでに議会による二院制審議にかけられている。
FIST法案は上下両院を既に通過し、現在、ロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領の署名を控え大統領府により審査中である。同法案は銀行の不良債権処理を助ける。法案は、パンデミックの影響で一部の借り手が期限内に債務を返済する能力に陰りが生じかねないことによる不良債権の潜在的増加にもかかわらず、銀行システムが健全な状態を維持することを支援する。
一方、ウイルスの拡散を抑制し、医療システムの能力を強化するための対策は、プラスの結果を示している。保健省は1月10日時点で、フィリピンのアクティブなCOVID症例が2万38に減少したと報告した。これは、6カ月で最低であり、死亡率は1.93%(世界平均を大幅に下回る)である。また、世界保健機関(WHO)の週次データによると、フィリピンで確認された毎日のCOVID症例と死亡者数は、2020年9月以降減少傾向にある。
フィッチは「危機に対する政府の効果的な対応、および新たなロックダウン・リスクの低減を反映して新たに毎日記録されたCOVID-19症例はここ数カ月で減少している。当局はまた、ワクチン確保で多国間イニシアチブに従事し、製薬会社数社と協力しており、ワクチン配布開始は2021年5月と予想される」と指摘した。
フィッチは同様に、今年と来年は、総外貨準備高(GIR)が引き続き輸入などの対外支払いの9カ月ないし10カ月に相当すると予想されることから、「フィリピンの対外金融は依然として信用力がある」と認めた。国際基準では、GIRは少なくとも3カ月の輸入カバー相当で十分だと示唆している。
フィッチはまた、フィリピンの銀行システムは今回の危機から生じる潜在的な信用損失を吸収できるように銀行準備金を十分に積んでおり、引き続き安定的であると見込んでいる。
昨年以来、さまざまな債務格付け機関によりフィリピンの信用格付けが据え置きとなったことは、特にCOVIDからの回復策に資金を提供する取り組みに関して有益なものだった。有利な信用格付けは、ソブリン(ないし任意の借入機関)が低コストで資金調達にアクセスするのに役立つ。
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