【北京2020年4月29日PR Newswire=共同通信JBN】
*科技日報(Science and Technology Daily)のリュー・ハイイン氏の報道
世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイエソス事務局長は4月20日、ジュネーブでの記者会見で、国際的連帯の欠如がパンデミックの状況を悪化させていると警告した。
テドロス氏は「このウイルスを、非難の応酬や政治的点数稼ぎのチャンスととらえないでほしい。それは危険だ。火遊びのようなものだ」と述べ、国内の団結と世界的連帯がなければ、「事態はさらに悪化する」と指摘した。
人類の歴史上には常に、様々なウイルスが待ち受けていた。人類の科学・技術水準は絶えず上がっているが、ウイルスに直面してどうにもならない局面もある。COVID-19の発生が凄まじい敵であることは証明済みである。これほどの急速なまん延、広範な感染、深刻な影響を伴うパンデミックは、1世紀に1度も起きないほどまれだ。
今回のウイルスがどこから来たのか?どのように進化したのか?誰もが答えを知りたがっている。すぐには分からないかもしれないが、真実はいずれ明らかになるだろう。
その仕事は専門家に任せよう。科学的問題は常に、科学者に解決してもらうべきである。これは常識だ。ホワイトハウスの科学技術政策局が2月にいち早く、ウイルスの起源調査に関する科学者の意見取りまとめを求める書簡を全米科学、技術、医学アカデミー(NASEM)に送ったのはこのためである。
ウイルスの起源調査は科学者の責務であり、他の者にそれを任せることはできない。しかし、科学者も全能ではなく、ウイルスの起源を探る研究を一晩で終わらせることはできない。
米微生物学アカデミーのフェローで、メリーランド大学のウイルス学者であるリチャード・Y・チャオ博士は、ウイルスの起源を探る研究は不確実性の非常に高い科学的課題だと指摘した。科学者は、疫学調査、ゲノム解析、宿主(中間宿主と自然宿主)のスクリーニングと同定、フィールドサンプリング、分離されたウイルス株の相同性研究、最終的なバイオインフォマティクス解析と同定を実施しなければならない。これらの手順が全て完了した後、はじめてウイルスの起源をたどることができる。
従って、ウイルスの起源を探る研究は長く、時間のかかるプロセスであり、科学者はその責務遂行に十分な時間を与えられるべきだと言ってよかろう。現在、世界中で多くの科学者がこのウイルスの科学的研究を行っており、ウイルスの起源を探る研究は当然ながら重要な仕事である。しかし、研究はまだ初期段階にある。
最新の重要研究成果情報によれば、COVID-19は研究室で作ることができず、自然の進化の産物だという。同ウイルスが、ヒト宿主あるいは動物宿主を自然に選んだ可能性があるということだ。研究結果は、世界的に著名な「ウイルスハンター」であるW・イアン・リプキン・コロンビア大学教授、スクリプス研究所のクリスチャン・アンデルセン免疫学・微生物学准教授、新型感染症と21世紀の健康脅威に関する常任委員会メンバーであるロバート・F・ギャリー・テュレーン大学教授ら米国、英国、オーストラリアの6人の科学者によって3月17日、ネイチャーメディシン誌に発表された。彼らは学界の権威と見なされており、ウイルスの起源を探る彼らの業績には高い関心が払われるべきだ。
しかし、科学的観点からウイルスの起源を探るという点では、先の道のりはまだ長い。一般に知られている現在の成果は、真の答えからはまだ程遠い。
世界中でパンデミックが深刻化する中、科学的態度でウイルスを阻止、抑制する科学的かつ断固たる措置を講じることが非常に重要である。ウイルスとパンデミックを政治的ツールとして利用すれば、パンデミックの阻止、抑制に役立たないだけでなく、逆効果を生み、より深刻な結果を引き起こすだろう。
このため世界中の多くの科学者が、パンデミックを科学的態度で扱い、科学的証拠を掲げ、国際協力を進めるよう呼び掛けてきた。世界中で通常の科学研究活動の多くが深刻な影響を受けている状況下で、各国間とその科学者の間の協力はより重要である。
ホワイトハウスの科学技術政策局の要請に対するNASEMの回答で述べられているように、こうした研究課題に対処し、現下のパンデミックがもたらすグローバルな課題を克服する上で、既に進行中の国際的、科学的協力はこれまで以上に重要である。
ソース:Science and Technology Daily