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新型コロナウイルスの発生源究明にはグローバルな取り組みが必要

Science and Technology Daily
2020-04-27 17:24 1820

【北京2020年4月27日PR Newswire=共同通信JBN】

*ウイルス学専門の長崎大学准教授の北里海雄博士と単独インタビュー

科技日報(Science and Technology Daily)の報道:

COVID-19は200以上の国・地域を席巻し、日々感染症例を増大している。

長崎大学准教授の北里海雄博士はこのパンデミックに大きな懸念を示している。科技日報記者とのインタビューで、ウイルスの伝染特性、ウイルス追跡可能性の科学的・長期的な性質、中国科学者の達成について詳細に分析し、グローバルな共同作業を呼びかけた。

▽新型コロナウイルスの伝染特性と世界的パンデミックの主因

北里海雄博士は世界中の研究報告に基づき、この新型コロナウイルスに以前発見されたSARS-CoV、MERS-CoVに比べ、いくつか新しい顕著な特徴があると結論付けている。

第1に、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質(Sタンパク質)は、ウイルス粒子の細胞侵入をもたらすエンベロープタンパク質で、ヒトのアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)結合タンパク質である。新型コロナウイルスのSタンパク質は、SARS-CoV Sタンパク質の10~20倍の親和性によって、細胞受容体ACE2に結合している。受容体に対するSタンパク質の高い親和性は、ウイルス粒子が細胞に強く付着して感染しやすいことを示している。

新型コロナウイルスはインフルエンザウイルスのような感染性エンベロープウイルスと同様、細胞侵入の感染プロセスでプロテアーゼ依存性がある。Sタンパク質自体は前駆タンパク質で細胞融合活性がない。宿主細胞のプロテアーゼによって、2つのタンパク小片S1とS2に切断される。小片S2の細胞膜融合をもたらす融合ペプチド(FP)にさらされた後、Sタンパク質は活性化し、ウイルス粒子が感染細胞膜に融合して細胞に侵入し、感染プロセスを完了する。

新型コロナウイルスの第2の特徴は、そのSタンパク質のS1とS2の間に、SARS-CoVやMERS-CoVにはないフーリンプロテアーゼ切断部位が存在することである。フーリンプロテアーゼはヒト細胞のユビキタスプロテアーゼである。新型コロナウイルスの粒子が集まり感染ヒト細胞から放出されると、ウイルスのSタンパク質は細胞内のフーリンプロテアーゼによってS1とS2の活性化状態に切断される。そして、ウイルス粒子はすでに強力な細胞感染と融合膜活性を備え、新型コロナウイルスの感染効率をSARS-CoVの約1000倍に高める。

最後に、新型コロナウイルスのSタンパク質の構造的特性が細胞に急速に感染、複製する能力を決定する。したがって、感染者は全身症状が現れる前の初期段階で、感染性の高い大量のウイルス粒子を放出する。インフルエンザウイルスより強力な感染性は、新型コロナウイルスが世界でパンデミックになりうる主因である。

▽ウイルス究明は重大な科学問題であり、はっきりした科学的証拠の裏付けが必要である

北里海雄博士によると、コロナウイルスはアルファ、ベータ、ガンマ、デルタの4種に分類できる。ガンマとデルタは主として鳥類に感染し、アルファとベータは主に哺乳類に感染する。新型コロナウイルスはベータグループに分類される。自然宿主はコウモリに由来するとみられる。また、同様のウイルスがセンザンコウ、ヘビ、その他の野生動物から見つかったと報告されている。

現在、感染ルートについては疑問が残されている。新型コロナウイルスは中間宿主経由で人々に感染するか、自然宿主から直接感染するかで、双方の綿密な研究が行われている。このため、ウイルス研究、中間宿主の探索、ウイルスの人々への感染研究は、ウイルス拡散を完全阻止する重要なステップである。

これは重大な科学問題であり、確かな科学的証拠で裏付けられなければならない。この危機に対するソリューションは、世界中の科学者の共同作業を必要としている。

▽インフルエンザ症例の疑いがある患者の血清抗体検査は、ウイルス発生源の研究に手掛かりを与える可能性がある

北里海雄博士は、人類史の中の連続的な疫病の記録は、新ウイルスがほかの生命体からヒトに侵入しうることを示唆するとみている。新ウイルスの出現によって、人体に特定の免疫がないことから、免疫システムを通じて感染を効果的に予防することは不可能である。ウイルスは引き続き拡散し、群衆の中で "子孫"を複製する。大半の人々がそれに免疫をもたない限り、パンデミック進行をうまく抑制することはできない。

ヒトが新生ウイルス感染に対処する最も効果的な方法は、ワクチンの研究と開発である。集団免疫の目標を達成するまでは、誰もがウイルスに感染しやすく、感染の可能性を免れる者はいない。

免疫システムには、体に侵入する病原体感染の記憶機能がある。現在の技術では、血中の抗体が検出されれば、各種病原体の過去の感染経験を明らかにすることが可能である。

将来、インフルエンザが疑われる臨床症例やほかの患者の血清抗体が幅広く検査されれば、新型コロナウイルス感染源を発見する手掛かりを得る助けになる。

▽中国の科学者は新たな挑戦をしっかりガード

伝染病の初期段階で中国の医師、科学者は最短期間で効率的にウイルスを隔離し、ウイルスのゲノム配列全体を分析した。中国はまた、伝染病発生以来、COVID-19情報を海外にタイムリーに伝え、COVID-19発生について国際社会に知らせてきた。

これは、専門職務の遂行と中国科学者の公衆衛生に対する責任感をはっきり示しており、一般の人々が新しい挑戦にともに立ち向かう強固な基盤を構築した。

また、中国政府は伝染病拡散を迅速に抑制するため、都市ロックダウンなど厳格で総合的な予防・管理措置をとり、ウイルスを封じ込め、市民を保護した。中国のこのような努力と犠牲は、世界が伝染病と共同で闘う貴重な時間を稼ぎ、世界保健機関(WHO)や各国関連専門家から高く評価されている。

▽COVID-19感染阻止の成功には「グローバル共同作業」が不可欠

COVID-19発生の初期段階、世界各国はあらゆる準備を整えるべきだった。しかし、一部政治家は自国のパンデミック拡散防止に積極策をとらず、世界中への拡散につながった。彼らはCOVID-19を政治利用する危険な試みを行い、われわれの共通の敵との共同の闘いに影を落としている。

新型コロナウイルスのパンデミックは1世紀に1度のグローバルな課題と見なされ、人類の生命と健康面に莫大なコストを負わせ、政治、経済、国家運営システムに課題を突き付けている。

COVID-19は人類の生命と健康にとって、大いなる脅威となっている。パンデミックは国、人種、性別、年齢、社会的地位を区別しない。全ての国が共通の敵に直面している今、グローバルな知恵と科学力によって手を組んで、COVID-19と闘わなければならない。連帯と協力があってはじめて、国際社会はパンデミックに打ち勝ち、人類共通のホームランドを守ることができる。

北里海雄博士は、COVID-19が広範囲のワクチン接種前はいつでも再発する可能性があると指摘した。人類は社会の正常な発展に影響を及ぼすことなく、このようなアウトブレーク発生の可能性に対処する代替案を積極的に打ち立てるべきである。

ソース: Science and Technology Daily