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国際民間企業連合、クリーン電化と水素で2050年までにGHG実質ゼロ可能と発表

Energy Transitions Commission
2021-04-27 07:01 1863

エネルギー移行委員会、電化を促進し、クリーン水素の補完的役割を拡大していくための道筋を新報告書で提案 

ロンドン, 2021年4月27日 /PRNewswire/ -- エネルギー移行委員会(ETC)は、2050年までに温室効果ガス(GHG)排出量が実質ゼロの経済の実現可能性と、この目標を達成するために今後10年間に求められる行動を分析した2つの新しい報告書を発表しました。ETCは、アルセロール・ミッタル、バンク・オブ・アメリカ、BP、中国国務院発展研究センター、EBRD、HSBC、イベルドローラ、オルステッド、シェル、タタ・グループ、ボルボ・グループ、世界資源研究所など、45以上のエネルギー生産事業者、エネルギー業界、金融機関、環境保護団体の世界的リーダーで構成された連合体です。再生可能エネルギーのコストは急速に低下しており、クリーン電化がこの変革の中心となります。電力化が困難または不可能な分野ではクリーン水素技術が補完的な役割を担います。 

ETC Global Power Report - cover
ETC Global Power Report - cover

Making Clean Electrification Possible:電化された世界経済を達成するための30年」という報告書の中で、再生可能エネルギーによる電力供給へ移行しつつ、世界の電力システム規模を5倍にすることの必要性、実現可能性そして費用面での実現性を説明しています。同時に発行された報告書Making the Hydrogen Economy Possible: 電化経済におけるクリーン水素の促進」では、 クリーン水素の補完的役割と、民間企業の協調と政策支援の組み合わせにより、クリーン水素の生産と利用の最初の立ち上げを促進し、2030年までに5,000万トンを達成する方法を提示しています。

2050年までのGHG実質ゼロは可能

パリ協定では、産業革命以前と比較し世界の平均気温を2°C未満に抑制するとともに、1.5°C未満に抑える努力を追及することを目標として掲げています。この目標を達成するためには、今世紀半ば頃までにGHGの排出量を実質ゼロにする必要があります。ETCは、今後30年以内にGHG排出量が実質ゼロの経済を実現することは、技術的にも経済的にも可能であるとしています。世界のエネルギーシステムには大規模な変革が迫っています。温室効果ガス実質ゼロの経済の基盤は、豊富で安価なゼロカーボン電力となるでしょう。

再生可能エネルギー開発は2030年までに5倍から7倍に加速 

最終的なエネルギー需要に占める電力の割合は、現在の20%に対して2050年には70%に達する可能性があり、今後数十年間で電力使用量は5倍にも増加すると予想されています。最終エネルギーの主な供給源をクリーンな電力に移行することは、経済の脱炭素化を図るうえで、最も安価で効率的な方法です。 報告書では、再生可能エネルギーや蓄電技術のコストの急速な下落により、クリーンな電力システムの大規模な拡大を低コストで実現することが可能であるとしています。しかしながら、風力や太陽光が総発電量に占める割合は、現在の10%から2030年には約40%、2050年には75%以上に増加しなければなりません。そのため、風力・太陽光発電の年間導入量は、2030年までに5倍から7倍、2050年までに10倍以上に拡大する必要があります。また、ゼロカーボン電力システムを大規模に配備するには、水力や原子力などの他のゼロカーボン発電技術、フレキシビリティソリューション、蓄電装置、電力ネットワークなども並行して整備する必要があります。

脱炭素化のための明確な国家戦略が策定され、適切な電力市場の設計によって民間の資金フローが発生すれば、明らかに達成可能な範囲であるとETCは述べています。実質ゼロ経済を実現するのに必要な投資の大部分(約80%)は、風力や太陽光を中心とした再生可能エネルギーへの投資です。今後30年間に、世界全体で80兆ドル以上の投資が必要とされます(年間平均約2.5兆ドル)。これには、電力網インフラへの投資に加えて、直接および間接的な電化を支援するための再生可能エネルギーへの投資が含まれます。これは大規模でありますが、世界のGDPの1.5%にも満たず、現在のマクロ経済環境では管理可能です。

クリーン水素製造コストは、2030年までに2ドル/kgを大幅に下回る 

クリーン水素は、鉄鋼生産や長距離輸送など、直接的な電化が技術的に非常に困難であったり、法外な費用がかかる部門の脱炭素化を補完する役割を果たします。今世紀半ばに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする経済では、年間約5億から8億トンのクリーンな水素を使用する必要があるとされ、これは現在の水素使用量の5~7倍に相当します。再生可能電力や電気分解の設備のコストが低下していることから、水の電気分解により製造されるグリーン水素はコスト競争力が最も高く、長期的には主要な製造ルートになると考えられます。2050年までには総生産量の約85%を占める可能性があります。しかし、炭素捕捉(回収率90%以上)と低メタン流出(0.05%未満)の天然ガスから製造されるブルー水素は、移行期や、非常に低コストのガスが存在する場所で重要な役割を果たすでしょう。

報告書では、コスト削減を実現し(クリーン水素のコストを2ドル/kg以下にする)、今世紀半ばの成長目標を達成するためには、2020年代に生産と利用を急拡大することが重要であると強調しています。しかし、クリーン水素がグレー水素よりも安くなったとしても、さまざまな産業や輸送分野で水素を使用することで、現在の高炭素技術に比べて「グリーンコスト割り増し」が加わります。そのため、クリーン水素の導入を加速させるためには、公共政策が不可欠です。さらに、政策立案者は、水素の輸送と貯蔵の需要の高まりに備えなければなりません 全体で、水素製造を強化するために必要な投資のうちの85%は、再生可能エネルギーによる電力供給を対象としています(上記の再生可能エネルギー投資に含まれる)。加えて、2050年までに、水素製造施設や輸送、貯蔵に約2.4兆ドル(年間800億ドル)が必要となります。 

2050年の目標を達成するために、2030年までに達成すべき重要なマイルストーン 

「現在は低コストで発電を完全に脱炭素化するための技術があります。そして、経済の大部分において、電化がゼロカーボン生産への鍵となります。今世紀半ばには、豊かな先進国でも現在の2倍から3倍、発展途上国では5倍から10倍もの電力が必要になります。政府、企業、投資家は、求められる新しい産業革命の規模と、それによってもたらされる巨大な機会を認識する必要があります」と、ETC議長のアデール・ターナー卿は述べています。

電力に関して、先進国は2030年代半ばまでに、途上国は2040年代半ばまでに、グリッドの排出強度を30gCO2/kWh以下にすることをETCは推奨しています。これらの中期的な目標を達成するために、2020年代において重要となる行動には以下があります。

  • 電力の脱炭素化と電化経済のための明確な国家中期目標 
  • 長期契約の役割を継続しつつ、民間投資を促進する電力市場の設計を含む、再生可能エネルギーの大規模展開への適切なインセンティブ。
  • ブレンドファイナンスを含む、発展途上国への投資のための資金フローの推進 
  • 大規模な電化と電力システムの脱炭素化を同時に行うために必要となるネットワークインフラの構築と能力への備え 
  • 導入を促進する計画と承認のプロセス 
  • 特に長期的なエネルギー貯蔵と柔軟性規定を見据えた将来の技術とビジネスモデルの開発

「ETCは、世界の電力システムの急速な脱炭素化が望ましく、それが達成でき、コスト的にも可能であることを実証しています。これが「ゼロ目標」への基盤であり、他の部門も脱炭素化を図るために必要なゼロカーボン電力を拡大させます。各国が電化と脱炭素化のための明確な戦略的計画を立てることで、企業や革新者は必要なクリーン電力を大幅に増加できるということを、ETCは強調しています」と、COP26の英国ハイレベル気候行動擁護者であるナイジェル・トッピング氏は述べています。

一方で、公共政策は、2020年代にかけてクリーン水素の需要を促進し、生産量を増加させる必要があります(2030年までに5000万トン)。そのために、既存の用途での水素製造を早急に脱炭素化し、鉄鋼、海運、合成航空燃料といった、技術的に整備されていないものの大きな需要が見込まれる他の主要部門において、水素の技術開発、試験、早期導入を促進する必要があります。クリーンな水素供給の規模拡大を後押しし、早期の需要拡大を達成する手段として、以下が挙げられます。

  • 脱炭素化のための幅広いインセンティブを生み出すカーボン価格 
  • 低炭素技術への需要および投資への財政支援メカニズムを創出するための部門別の政策や、「グリーンコスト割り増し」の課題を克服するための政策 
  • 大規模な電解の製造や設備の開発目標 
  • 重要な技術を市場に投入するための公的支援と民間部門の協力 
  • 関係者全員の投資リスクを軽減しながらの、水素の製造、貯蔵、輸送、最終使用の同時開発を可能にする水素産業クラスターの開発 
  • 水素の安全性、純度、GHG排出量に関する規則や基準の確立 

「直接的な電化が不可能だったり費用が高すぎたりする分野において、クリーンな水素は脱炭素化の鍵となります。水素を還元剤として使用することで、鉄はゼロカーボンにできます。また、外航船舶ではグリーン水素から作られたアンモニアを燃やすことができるようになるでしょう。水素は風や太陽がないときに電気を供給します。世界全体で、現在の5倍から7倍の水素を生産し利用する必要があるとされますが、その実現に本質的な障害はありません。しかし、現在求められている速度でクリーンな水素の成長を推進するためには、強力な公共政策の支援と先見性のある民間投資が必要です」と、ETCの議長であるアデア・ターナー卿は述べています。

「再生可能な電力から作られるグリーン水素は、持続可能な脱炭素エネルギー分野の実現するための根本的な電化を補完する手段として最良です。そうすることで、投資機会と適切な雇用をもたらしつつ、経済はよりクリーンで競争力のあるものとなります。この新しい経済の規模を拡大する政治公約が必要であり、今後数年間で経済的にも環境的にも重要な利益をもたらすでしょう」と、イベルドローラ社の改革&持続可能性責任者であるアグスティン・デルガド氏は述べています。

Making Clean Electrification Possible報告書全文はこちらからご覧いただけます:

https://www.energy-transitions.org/publications/making-clean-electrification-possible/

Making the Hydrogen Economy Possible報告書全文はこちらからご覧いただけます:

https://www.energy-transitions.org/publications/making-hydrogen-economy-possible/  

エネルギー移行委員会について 

Making Clean Electrification Possible: 世界経済を電化するための30 およびMaking the Hydrogen Economy Possible: 電化経済におけるクリーン水素の促進ETC事務局の援助を受けて委員会が作成し、SYSTEMIQが提供しています。これらはETCの過去の出版物に基づいており、企業、業界団体、国際機関、非政府組織、学界からの何百人もの専門家との緊密な協議を経て作成されました。

本報告書は、ETCのナレッジパートナーであるSYSTEMIQとブルームバーグNEFによる分析に加え、気候政策イニシアチブ、Material Economics、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ロッキーマウンテン研究所、資源エネルギー研究所、Vivid EconomicsがETCのために、あるいはETCと協力して実施した分析に基づき作成されています。国際エネルギー機関やIRENAの分析も参考にしています。ナレッジパートナーと貢献者の方々のご意見提供に感謝いたします。

本報告書は、エネルギー移行委員会の見解をまとめたものです。ETCのメンバーは、本報告書で述べられている議論の大筋を支持していますが、すべての知見や提言に同意しているわけではないことをご承知ください。それぞれの委員が所属する機関は、この報告書に正式に賛同することを求められていません。

より詳しい情報はETCのサイトwww.energy-transitions.orgをご覧ください

ETC委員一覧はこちら。  

委員からの引用

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ETC Global Hydrogen Report - Cover
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ソース: Energy Transitions Commission