アルウラ(サウジアラビア), 2023年9月13日 /PRNewswire/ -- アルウラ王立委員会(Royal Commission for AlUla、RCU)が支援する最近の考古学的発掘2件の結果は、北西アラビアの新石器時代住民が紀元前6000年期後半、「複雑かつ洗練された儀式」を行っていたことを示しています。
前例のない発見は、北西アラビア古代人の社会、文化、精神的背景の理解深化に思いも寄らない地平線を開いています。
研究者は儀式の共通的特徴、および、最古の巡礼慣習の1つとされる儀式を執り行う「ムスタチル(mustatils)」という先史時代の石の構造物をはっきり目指して人々が旅行した可能性を強調しています。また、動物供物の中で在来種が目立っていることは、コミュニティーの遊牧民の特徴を確認しています。彼らは社会的絆の形や縄張りの目印として、ムスタチルを建造した可能性があります。
ムスタチルは大型の長方形の野外構造物で、低い石の壁があります。研究者らは航空測量によって、アラビア北部で1600点以上を特定しています。構造物の機能は当初不明でしたが、2018年以降の発掘で儀式的な重要性が指摘され、一層の知見を提供しています。
2つの研究結果は査読され、最近公刊されました。Archéorient LaboratoryのWael Abu-Azizeh博士とフランスのリヨン第2大学に率いられた研究は、RCU考古学担当理事のRebecca Foote博士率いる専門家チームが編集した著書「Revealing Cultural Landscapes in North-West Arabia(北西アラビアの文化状況を明示)」に掲載されています。シドニー大学(オーストラリア)のMelissa Kennedy博士が率いる研究は3月に、科学誌PLoS Oneに登場しました。
▽Abu-Azizeh博士の研究
Abu-Azizeh博士は2018年、Oxford Archaeologyを代表して発掘を開始し、アルウラ北東IDIHA-0000687サイトのムスタチルで、紀元前5300年から5000年にさかのぼる"Horn Chamber(角部屋)"を発掘しました。その部屋は3.25メートル×0.8メートルで、大半のムスタチルより小さい40メートル×12メートルのものの西端にあります。
"Horn Chamber"内部で彼とそのチームは、部屋の床を覆う深さ20~30センチの層にびっしりと詰まった角と頭骨片を発見しました。彼らは、これは「北アラビア新石器時代では独特かつ前例のない組み合わせ」と書いています。
角と頭骨片の約95%はヤギ、羊、牛の在来種で、残りはガゼル、ヌビアアイベックス、オーロックス(絶滅した家畜牛の祖先)などの野生種です。集積物の下には、儀式準備で室内の砂岩の表面に置かれた小枝の薄い床材がありました。
研究者らは、角と頭骨片が1回の儀式で配されたもようと結論付けています。仮の儀式復元で、彼らは遊牧民が集まり、儀式手順の一部として供物をくりぬいたとみています。小さなHorn Chamberの厳粛な空間に達するため、彼らは狭い入口と小さな囲炉裏のある前室に1人ずつ入り、社会集団を代表してトロフィーを差し出しました。合祀された供物の一群は、幅広い社会集団のまとまったにアイデンティティーを表わしています。
研究者らは「遺物の量や種の多様性、特異な保存状態から、この集積物はこの地域の考古学的記録上、独特かつ前例のない発見になっています。この埋蔵物は複雑で洗練された儀式行為の証拠と解釈されます」と書きました。
▽Kennedy博士の研究
2019年に、当時西オーストラリア大学のKennedy博士率いる第2の研究で、アルウラ東方の密集した砂岩渓谷の奥、IDIHA-0008222サイトにあるムスタチルの発掘が開始されました。Abu-Azizeh博士のチーム同様、彼らは紀元前5200年から5000年の角と頭骨片がある部屋を発見しましたが、量はさほど多くありませんでした。さらに違いがあります。これらの骨は一度ではなく、1世代か2世代の3、4段階に埋められたようです。
角と頭骨片の大半は畜牛で、いくつかヤギもありました。研究者らはこの発見について「北アラビアで最古級の畜牛とヤギの証明」と書いています。
聖堂の中心には直立した石があり、儀式の焦点と信じられています。角と頭骨片はほとんどこの高さ0.8メートルの直立した石の周りに埋められていました。研究者らはこの石を「人類と神の仲介者で、新石器時代の未知の神格や宗教思想の代理、または顕現として機能し、動物的要素が奉納物として預けられた」ベチル(betyl)と解釈しています。これはアラビア半島で知られる最古のベチルの1つです。
研究者らはさらに、何年にもわたり聖堂を繰り返し使ったことは「アラビア半島で現在確認されている"巡礼"あるいは聖堂再訪の最古の例の1つを表わす」としています。
興味深いことに、彼らはムスタチルの配置に生態学的基盤があったかもしれないという仮説を立てています。完新世中期にアラビアの気候は乾燥が進み、変化する微気候が移動を不可欠にし、群居を可能にしていました。儀式は肥沃と雨の継続性確保を意図した可能性があります。ムスタチル自身がワジなどの水源近くに配されたようです。著者らは、これが将来の研究のカギを握っているとしています。
RCU考古学および文化遺産調査担当理事のRebecca Foote博士は「RCUは世界最大級の考古学研究プログラムに着手しました。アルウラとカイバル(Khaybar)全域に及ぶ12件の調査、発掘、特別プロジェクトは、地域の過去の環境、土地使用、人の活動に対するわれわれの理解を深めています。葬送街道、ムスタチル、古代都市、10カ国語の碑文、岩面美術、複雑な農業慣行を含む豊かな文化景観が明らかにされています。アルウラは考古学活動の主要なハブであり、その地位は第1回AlUla World Archaeology Summit(アルウラ世界考古学サミット)によって強化されるでしょう」と話しました。
▽AlUla World Archaeology Summit
RCUは2023年9月13-15日、第1回AlUla World Archaeology Summitを開催し、考古学活動のハブとしてのアルウラの地位は拡大し続けます。
サミットは、考古学と文化遺産管理を他分野との接点で進めるプラットフォームです。学界や政府、非政府組織、産業界のリーダー、および、次世代考古学者を代表する若者の結集は、考古学界を豊かにして共有する歴史の保護に役立つばかりか、考古学、ひいては文化遺産の何が、いかに社会で革新的変化に貢献できるかというより大きな思考を切り開くでしょう。
サミットの詳細はhttps://www.worldarchaeologysummit.com を参照してください。
▽アルウラ王立委員会について
アルウラ王立委員会(RCU)は2017年7月、サウジアラビア北西部の素晴らしい自然と文化的重要性のある地域アルウラを保全・開発するため国王令によって設置されました。RCUの長期計画は、同地域の自然と歴史的遺産を保全しつつ、アルウラを居住、仕事、観光に望ましい場所とする都市・経済発展に責任ある持続可能で繊細なアプローチの概要を示しています。これには考古学、観光、文化、教育、芸術にわたる幅広い取り組みが含まれ、サウジアラビア王国のビジョン2030プログラムの経済的多様性と地域社会の活性化、遺産保全活動優先への寄与が反映されています。
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