*空間的遺伝子発現解析技術から科学的成果を最大限引き出すことに焦点を当て、世界中の80人以上の科学者が参加してSTOCがスタート
*最初の研究は、BGI-ResearchのStereo-seqを使用して、マウス、ショウジョウバエ、ゼブラフィッシュ、シロイヌナズナの時空間細胞マップを作成
【深セン(中国)2022年5月6日PR Newswire=共同通信JBN】16カ国の科学者が5日、空間的遺伝子発現解析技術を使った生命のマッピングと理解に焦点を当てたオープンな科学コミュニティー「時空間オミクス・コンソーシアム(SpatioTemporal Omics Consortium、STOC)」の設立を発表した。STOCの最初の研究成果である、最先端の生命パノラマ空間アトラスは、5月4日付のセル(Cell)誌とデベロプメンタル・セル(Developmental Cell)誌に掲載された。
ハーバード大学、オックスフォード大学、MIT、ケンブリッジ大学、カロリンスカ研究所、西オーストラリア大学、シンガポールゲノム研究所、BGI-Researchなどから80人以上の科学者がSTOCの一員として共同研究をしている。パノラマ・アトラスを作成した研究グループのメンバーは、BGI-Researchが開発した新たな実現技術Stereo-seqを使い、マウス、小型ミバエ(ショウジョウバエ)、ゼブラフィッシュ、シロイヌナズナのこれまでで最も洞察に満ちた時空間細胞マップを作成し、解像度やパノラマ視野を飛躍的に向上させ、そのままの状態と時間の経過に伴う分子や細胞の分布、配置を解析できるようにした。
組織内の特定の細胞の特徴を明らかにすることは、生理学、生物の発生の仕方、どの細胞が疾患の原因や指標となるかを理解する重要な方法で、ヒトの疾患研究で将来的に役に立つ可能性がある。これらは、STOCにとって、時空間アトラスづくりにより、疾患治療、臓器の構造、発達、老化に関する知見を広げ、生物の進化への理解を深めることを目指す研究イニシアチブの重要な基礎となる。
ケンブリッジ大学ウェルカムMRCケンブリッジ幹細胞研究所所長でSTOCメンバーのBerthold Gottgens氏は「ここ数年、単細胞のゲノムや遺伝子発現解析のマッピングは大きく進展してきた。しかし、これには細胞の近傍性や細胞のエコシステムといった空間的側面が欠落し、全体的な情報の積み重ねが欠けていたが、ようやく入手可能になった。これは、基礎研究と橋渡し研究の両方に大きな影響を与えるだろう」と語った。
STOC組織委員のWeibin Liu氏は、時空間オミクスが科学研究にどのような変革をもたらすかは、STOCの目標に明記されていると説明する。
Liu氏は「昨日発表されたパノラマ・アトラスは、心と体、若さと老い、健康と病気、人類の起源と未来、そしてその他の生物界についての人類の理解を大きく変えるというコンソーシアムのビジョンに向けた第一歩だ」「このアトラスは、コンソーシアムが共同で完成させることができる複数のアトラスの基礎となり、他の時空間アトラスの作成方法の有効性も検証してくれる」と語った。
同氏は「こうした試みには、科学から工学、数学までの複数の学問分野と、医療から産業、資金提供者まで多様な利害関係者にまたがる、グローバルかつ協調的な取り組みが欠かせない。われわれはこれまでに集まった80人以上のメンバーと共に、進むべき道を示し、新たなツールや能力をつくり上げ、リソースや成果を共有し、未知のものをマッピングし解決していく」と付け加えた。
時空間オミクス・コンソーシアム(STOC)は、生命の謎を解明するため、時空間オミクスに関するグローバルな科学的取り組みを統合、組織化、前進、共有するために設立されたオープンな共同研究イニシアチブである。STOCの詳細については、www.sto-consortium.org を参照。