*アフリカのような農業依存度の高い地域は、気候危機の要因となることはほとんどしていないが、最も大きな被害を受けているため、適応資金が早急に必要
グラスゴー(英スコットランド), 2021年11月3日 /PRNewswire/ -- 気候変動は、サハラ以南のアフリカのような農業依存度の高い地域に最も大きな影響を与えるという証拠が次々と明らかになる中(https://reliefweb.int/report/world/what-can-smallholder-farmers-grow-warmer-world-climate-change-and-future-crop )、国連気候サミットに参加した資金提供国グループは3日、農業研究パートナーシップのグローバルネットワーク「国際農業研究協議グループ(CGIAR)」を通じて、低所得国の農家に気候変動対応ソリューションを提供するため、5億7500万ドルの拠出を表明した。先ごろのチャリティーイベント「グローバル・シチズン・ライブ」で表明された2億5600万ドル、それとは別のスウェーデンとベルギーからの拠出表明と合わせて、CGIARは今年、飢餓、貧困とのグローバルな戦いを根底から覆してしまいかねない気候問題の急速な激化に立ち向かうため、8億6300万ドルを確保した。
今週末の第26回気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)では、CGIARへの大幅な拠出金追加が浮上する可能性もある。
CGIARのグローバルエンゲージメント&イノベーションのマネジングディレクター、Kundhavi Kadiresan氏は「拠出金の急増は、既に何百万戸もの農家に、ストレス耐性のある作物品種や荒廃した土地を回復させるための新たな戦略などのイノベーションを提供しているCGIARの気候適応の取り組みを加速させる、歓迎すべき手付金だ。われわれは、気候変動がサハラ以南のアフリカや南アジアなどの急成長地域の食糧生産にさまざまな形で影響を与えていることを深く理解し、農業と自然のバランスを取り戻すべく、環境的に持続可能な総合的ソリューションを通じた復元力の強化に取り組んでいる」と語った。
CGIARは世界最大の公的機関の研究パートナーシップで、アフリカ、アジア、ラテンアメリカの数十億人の人々に食料を供給している5億人以上の零細農家のニーズに応えている。気候変動が作物、魚、家畜に及ぼす影響は、長年の進歩を蝕んでいる飢餓の着実な増加の背景にある重要な要因である。
気候変動の脅威の軌跡は、ほとんどの人が農業に従事しているサハラ以南のアフリカで特に深刻で、気候変動により2030年までにアフリカ諸国のGDPの最大15%が失われる(https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0305750X1930347X )とされている主な理由は、食料生産に影響を与えるからである。また、農家の適応を支援する積極的な取り組みがなければ、既に高い貧困率と栄養不良に悩まされている地域の農業への気候変動の影響により、2030年までに飢餓をゼロにし、極度の貧困をなくすことを約束したグローバルな持続可能な開発目標(SDGs)(https://openknowledge.worldbank.org/bitstream/handle/10986/34555/Revised-Estimates-of-the-Impact-of-Climate-Change-on-Extreme-Poverty-by-2030.pdf?sequence=1&isAllowed=y )の達成が不可能になるという懸念もある。
3日の発表でビル&メリンダ・ゲイツ財団は、CGIARの気候関連活動の支援に、今後3年間で3億1500万ドルを拠出すると表明した。ゲイツ財団からの3億1500万ドルの拠出金の半分は、CGIARのパートナーシップ、知識、アセットを効率化し、零細農家に流れるイノベーションのペースを加速させる、新しいCGIARポートフォリオを通じて行われる気候適応イニシアチブの支援に充てられる。
さらに、米国国際開発庁(USAID)は今後5年間で2億1500万ドル、カナダは4500万ドルの拠出を表明した。
その他の資金提供者からは、2022年以降のCGIARの「研究とイノベーション」戦略を支援する意向も表明された。スウェーデンは1800万ドルの拠出を表明、ベルギーはCGIARとの強力なパートナーシップの継続を望むとした上で、連邦議会で2022年予算が承認されるのを待って、1400万ドルを追加拠出する計画を明らかにした。
3日に発表された資金拠出は、9月の「グローバル・シチズン・ライブ」で欧州委員会、オランダ、ベルギーがCGIARへの拠出を表明した計2億5600万ドルに上乗せされる。欧州委員会は1億6240万ドル、オランダは8700万ドル、ベルギーは700万ドルの拠出を表明した。
ビル&メリンダ・ゲイツ財団のビル・ゲイツ(Bill Gates)共同議長は「食料生産に対する気候変動の影響は、農業で家族を養っている数億人の人々にとって、生死に関わる脅威だ。CGIARは、半世紀にわたって零細農家にインパクトのあるソリューションを提供してきており(https://www.cgiar.org/cgiar-at-50/ )、変わりつつある気候への適応に必要なイノベーションを開発するグローバルな取り組みを主導できると確信している」と語った。
USAIDの復元力・食糧安全保障局担当次官、Jim Barnhart博士は「CGIAR設立当初からの資金拠出機関の1つであるUSAIDは、CGIARの重要な農業研究とイノベーションに5年間で少なくとも2億1500万ドルを拠出することで、長年のパートナーシップを継続できることを誇りに思っている。気候変動は、特に後発開発途上国において、家族やコミュニティーの命と暮らしを脅かしている。今回の資金拠出は、南アジアとサハラ以南のアフリカの2億人の農業生産性を2030年までに25%向上させるのに役立つだろう。CGIARは、食料が確保され、気候変動に強い未来を築くわれわれの活動において、重要なパートナーだ」と語った。
カナダ太平洋経済開発庁担当相を兼任するハルジット・S・ サージャン(Harjit S. Sajjan)国際開発相は「CGIARは50年にわたり、飢餓に対処するための重要な研究とイノベーションを提供してきた。カナダは、食料、土地、水のシステムをより持続可能で、公平で、効率的なものにするためには、科学的な研究とイノベーションが必要だと考え、設立当初からパートナーとして参加してきた。われわれは今日、飢餓をなくし、気候変動に強い、持続可能な食料システムを構築し、グローバルな農業の開発研究の最前線にジェンダー平等を置くため、CGIARの活動のさらなる支援に3年間で5500万カナダ・ドルを喜んで拠出する」と語った。
新たな拠出金は、CGIARが支援する気候変動対策活動の強固な基盤を、さらに強化することになる。例えば、近年、CGIARのパートナーシップにより、約800万戸の農家に200種類の気候変動に強いトウモロコシが提供され(https://www.cgiar.org/innovations/climate-smart-maize/ )、約1800万戸の農家に洪水や塩害に強い新種の米が提供された(https://www.cgiar.org/innovations/climate-smart-rice/ )。CGIARは、アフリカ、アジア、ラテンアメリカの数百万戸の農家が暮らす気候変動に強い村や集落のネットワーク(https://www.cgiar.org/innovations/climate-smart-villages-and-valleys/ )が、気候変動に強い食料生産方法を一本化する取り組みも主導している。さらに、水産養殖のような低排出で栄養価の高い食料生産に関するCGIARの先駆的な研究(https://www.cgiar.org/news-events/news/diversifying-aquaculture-systems-to-nourish-nations/ )は、村落の食生活と収入の向上に新たな持続可能な道を開いている。
COP26では、零細農家への支援を強化するための「気候変動に対応した農業イノベーションミッション(Agriculture Innovation Mission for Climate、AIM4C)」(https://aimforclimate.org/ )の発足が、大きな後押しとなっている。AIM4Cは、米国とアラブ首長国連邦(UAE)が立ち上げた連合で現在、30カ国以上が参加しており、画期的な農業の基礎研究、国際的なパートナーシップ、低所得国の国内農業研究システムに新たな資金を提供している。AIM4Cの主目的は、新たな資金が零細農家に直ちに影響を与えるようにするプロジェクト「イノベーション・スプリント」への拠出金を大幅に増やすことである。
CGIARが主導する4000万ドルのイノベーション・スプリントは、食糧農業研究財団(FFAR)およびゲイツ財団とのパートナーシップにより、CGIARが世界中から集めた作物の幅広い多様性から、気候変動に強い重要な形質を引き出すものである。このスプリントでは、作物の育種家が、農家に気候変動に強い多様な作物品種を提供するのに必要な原材料を提供する。
CGIARの経営管理チーム議長兼リサーチデリバリー&インパクト・マネージングディレクターのClaudia Sadoff氏は「急を要するのは明らかだ。国際社会が飢餓と貧困の撲滅に真に取り組むのなら、気候変動の影響を既に受けている零細農家のコミュニティーを支援するため、今すぐ行動を起こさなければいけない。エキサイティングなイノベーションは数多くある。 しかし、今日の発表をもってしても、零細農家にとっての気候変動の脅威の大きさと、彼らが適応できるよう支援するために必要な拠出金との間には、まだ大きなギャップがある」と語った。
Sadoff氏は、適応策への資金提供は「世界で最も貴重かつ脆弱なエコシステムにおいて、自然にとってポジティブなアプローチによる食料生産を実現する歴史的な機会」でもあると指摘。「農業における適応とは、より環境に優しい道を追求することだ。これには、農家がより少ない水でより多くの食料を栽培するための技術を提供することや、食料生産とエコシステムサービスの両方を支える総合的な戦略によって荒廃した景観を再生することも含まれる」と語った。
編集者注
▽国際農業研究協議グループ(CGIAR)について
CGIARは、未来の食料確保のためのグローバルな研究パートナーシップである。CGIARの科学は、気候危機の中で食料、土地、水のシステムを変革することにつぎ込まれている。その研究は、CGIARの13のセンターやアライアンスが、国や地域の研究機関、市民社会組織、学術機関、開発機関、民間企業など、何百ものパートナーと密接に協力して実施している。www.cgiar.org
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