自動車生産台数の増加や排ガス規制の強化、産業用需要の回復が早かったことにより、白金族需要はコロナウイルスの世界的流行に伴う混乱から力強く回復。
2020年から2021年初めにかけて発生した鉱山の操業停止や処理設備の稼働停止は供給に影響を及ぼし、白金族価格を押し上げた。
パラジウムとロジウムの価格は2021年初めに急騰し過去最高を記録。両市場は構造的に大幅な供給不足となっている。
ロンドン, 2021年5月17日 /PRNewswire/ --
ジョンソン・マッセイの最新の白金族需給調査報告書「Pgm Market Report May 2021」によると、自動車触媒需要は27%増加するものの、2021年のプラチナ市場は供給過多に戻ると予想される。コロナウイルスによる混乱が収まり、また処理設備の稼働停止により蓄積した仕掛品が処理されるため、南アフリカのプラチナ供給は40%近くの急回復を示すだろう。プラチナ価格の上昇により日本の投資用地金需要は2021年初めにマイナスに転じ、上場投資信託 (ETF) への投資も抑制された。中国の小売業者は2020年後半にプラチナ宝飾品の在庫を増やしたが、金との価格差が縮まったため、販売量は鈍化している。
パラジウムとロジウムの市場は2021年も引き続き供給不足のままであろう。両金属とも2021年初めに過去最高値を記録。パラジウム価格は3,000ドルを超え、ロジウム価格は30,000ドルへの急騰を繰り返した。価格高騰に対処するため、自動車会社は一台あたりの使用量の削減やパラジウムからプラチナへの置き換えのプログラムを加速させ、ガソリン車の自動車触媒で使用されているこれらの貴金属の低減に努めている。しかしながら自動車生産が回復し、主要市場では排ガス規制の強化や走行試験の厳格化が進んでいるため、2021年のパラジウムとロジウムの自動車触媒需要は二桁の伸びを示すであろう。
ジョンソン・マッセイの市場調査担当ディレクターであるルーペン・ライタタは以下のようにコメントしている。「多くの地域における排ガス規制の強化や、欧州における実路走行 (RDE) 試験の実施により、触媒システム全体での白金族含有量は依然として上昇しています。全世界ほとんどすべての自動車会社が積極的な使用量の削減や置き換えのプログラムに取り組んでいるものの、触媒システム当たりの含有量の上昇はパラジウムやロジウムの需要を支えています。一方、自動車触媒中の白金族に占めるプラチナの割合は増加しており、ガソリン車向けのプラチナ需要は絶対量としてはまだまだ少ないながらも2021年は大きく伸びるでしょう。プラチナ需要はまたChina VI排ガス規制の段階的な導入による恩恵も受けるでしょう。China VIの排ガス基準を満たすには大型ディーゼル車向け触媒システムの大幅な変更が必要であり、今年の中国のディーゼルトラックの白金族担持量は三倍になると予想しています。」
ロシアでは二つの鉱山が浸水により一時的に閉鎖されたものの、2021年の鉱山からの白金族供給量 (白金族の一次供給量) は大きく伸びるものと予想される。南アフリカからの供給は、昨年の処理工場の休止期間中に蓄積した約100万オンス (30トン強) におよぶ仕掛品が処理されることにより増加する見込みである。また価格の上昇により使用済み自動車触媒からの白金族リサイクルは促進されるが、ディーゼル微粒子捕集フィルター (DPF) の処理の技術的な制約により、プラチナのリサイクル量は制約を受けるだろう。
ジョンソン・マッセイのプリンシパル・アナリストであるアリソン・カウリーは次のように述べている。「一次供給量は今年約16%増加するするでしょう。ただ2019年の水準には及ばないと思われます。ほとんどの南アフリカのシャフトはコロナ以前に近い水準で操業しており、浸水の影響を受けたロシアの二つの鉱山のうちの一つでは既に生産が再開されています。精製能力の制約が障害になりつつあるものの、二次供給量 (リサイクルからの供給量) も大きく伸びるでしょう。多くの白金族の二次精製所 (リサイクル品の精製所) では精製能力の限界近くで操業しており、処理量を増やす余力は限られています。」
ルテニウムやイリジウムといった「マイナー」白金族の価格は2021年の初めに急騰している。これは産業用需要が強いこと、南アフリカからの供給が不安定なこと、また水素関連用途でこれらの白金族が使用される可能性に対する投資家の意識が高まっていることを表している。ジョンソン・マッセイのPgm Market Report May 2021には「ネットゼロの未来に向けたグリーン水素: 白金族の役割は?」と題した特集記事が掲載されている。
ジョンソン・マッセイのプリンシパル・アナリストであるマージェリー・ライアンは以下のように述べている。「英国、欧州連合 (EU) 、中国、そして最近では米国のバイデン政権が掲げた実質ゼロの達成には、化石燃料の代替として水素の使用を大幅に増やす必要があり、水素社会では白金族が重要な役割を果たすことになるでしょう。発電所などの定置型および自動車などの輸送用途の水素燃料電池向けプラチナ需要はすでに大きく伸びています。今後は固体高分子膜 (PEM: Polymer Electrolyte Membrane) 水電解でグリーン水素を発生させるために白金族を使った触媒が幅広く使われていくものと予想しています。クリーン水素セクターはまだ誕生したばかりですが、関心はすでに白金族、その中でも特にプラチナとイリジウムへと向かい始めています。」
報道関係者各位:
ジョンソン・マッセイのPgm market reportはウェブサイト (http://www.platinum.matthey.com/services/market-research/pgm-market-report) で閲覧およびダウンロード可能で、2020年における白金族市場の需給動向に加え、2021年の見通しが掲載されています。
ツイッターアカウント@PMMJMにもツイートされます。
ジョンソン・マッセイの市場調査部は1980年代から白金族市場の世界規模での需給調査を実施しております。1985年から2013年にかけてはPlatinumまたはPlatinum Interimシリーズとして、2014年以降はPgm market reportとして、需給データを年2回発行しています。過去のレポートやデータは次の弊社サイトからダウンロード可能です。http://www.platinum.matthey.com/services/market-research/pgm-market-report
ジョンソン・マッセイはよりクリーンでより健康的な世界を実現するサイエンス分野での世界的なリーダーです。イノベーションと技術革新への200年以上およぶ継続的な取り組みにより、当社はお客様の製品の性能、機能、そして安全性を高めてまいります。我々のサイエンスは低排ガス輸送、製薬、化学処理、地球の天然資源を最も効率的に活用する事などの分野で全世界に貢献しております。現在、世界で15,000人を超えるジョンソン・マッセイの社員が、当社の顧客やパートナーと協力し、私たちを取り巻く世界に真の変化をもたらしています。より詳細については当社のウェブサイト (www.matthey.com) をご覧ください。