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アルツハイマー病の血液検査のタウ・マーカーで一歩前進:アルツハイマー病協会国際会議2020より

Alzheimer's Association
2020-07-29 00:30 7091

【シカゴ2020年7月29日PR Newswire=共同通信JBN】アルツハイマー病が簡単に血液検査できるようになれば、同疾患を患っていたりそのリスクのある人々や家族、医師、研究者にとって大きな前進だ。

Alzheimer's Association International Conference(R)(アルツハイマー病協会国際会議(R))(Alzheimer's Association International Conference )(AAIC(R))2020で、科学者らはタウタンパク質の変異体を調べる血液「検査」の進歩に関する複数の研究結果を報告。そのうちの1つは、認知症が発症する20年前に脳の変化を検知できる可能性がある。具体的には、これらの報告はアルツハイマー病に最も特異的で、最も早期に測定可能な変化が表れるとみられる、p-tau217というタウの特異体に注目している。

脳のタンパク質であるアミロイドとタウの変化と、それらがそれぞれプラークやもつれと言われる凝集体を形成することが、脳におけるアルツハイマー病の決定的な物理的特徴である。タウのもつれの蓄積は、認知機能の低下と密接に関連していると考えられている。今回新たに報告された研究結果では、もつれが見られるタウの1形態であるp-tau217の血中/血漿中濃度も、アミロイドの蓄積と密接に相関しているようである。

現在、アルツハイマー型認知症の発症前に起きる脳の変化を確実に評価できるのは、陽電子放出断層撮影(PET)スキャンと脳脊髄液(CSF)内のアミロイドおよびタウタンパク質の測定だけである。こうした方法は高額で侵襲的である。また、保険の対象外か利用困難か、またはその両方の理由で、利用できないことが多い。

Alzheimer's Association(アルツハイマー病協会)の最高科学責任者、Maria C. Carrillo医学博士は「シンプルで高額でなく、非侵襲的で簡単に利用できるアルツハイマー病の診断ツールがすぐにでも必要だ。新たな検査技術は、多くの点で医薬品開発にも役立てられる。例えば、臨床試験に適した人を特定したり、試験中の治療法の効果の追跡調査に役立てられる。アルツハイマー病で脳が深刻な損傷を受ける前に早期発見と治療による介入が可能になれば、本人、家族、そしてわれわれの医療システムに革命的変化がもたらされるだろう」と語った。

例えば血液検査で、はるかに多くの、より多様で、より頑健な集団を対象にアルツハイマー病の進行の解明と理解が可能になる。

Carrillo博士は「今回の新たな報告は好材料ではあるが、初期の結果であり、こうした検査が臨床で使えるようになるのにどれぐらいの時間がかかるのかはまだ分からない。アルツハイマー病の臨床試験のように、長期かつ大規模な研究で試験をする必要がある。さらに、脳脊髄液やPET画像診断バイオマーカーなど現在の最先端技術である検査の改良や検証のための研究も続ける必要がある」と付言した。

▽血中P-tau217は高精度でアルツハイマー病(プラークともつれの両方)を検知

AAIC 2020で報告されたように、国際的な研究チームは、血液中のp-tau217のレベルを測定することでアルツハイマー病を発見できる高精度の血液ベースのバイオマーカーを同定し、複数の多様な集団で研究結果を検証した。科学者らは「血中p-tau217の診断精度は、侵襲的でコストが高く、利用しにくい陽電子放出断層撮影(PET)画像診断や脳脊髄液バイオマーカーなどの確立された診断方法と同じくらい高かった」と結論付けた。

研究チームのリーダーはスウェーデンのルンド大学のOskar Hansson医学博士で、ルンド大学のSebastian Palmqvist医学博士とShorena Janelidze医学博士、米国のバナー・アルツハイマー病研究所のEric Reiman医師、米国のイーライリリーのJeffrey Dage医学博士の協力を得た。ルンド大学の研究者がAAICで結果を発表、それらはオンラインでも発表された。

彼らは、スウェーデンの大規模な臨床ベースの研究(BioFINDER-2研究)、神経病理学的にアルツハイマー病が確認された群(加齢と神経変性疾患に関するアリゾナ研究)、遺伝が要因のアルツハイマー病を患う大集団(コロンビアの常染色体優性アルツハイマー病登録簿)の3つの異なる患者群、計1400例以上を研究。血液と脳脊髄液の両方で、それ以外の現在実験中のバイオマーカー(p-tau217、p-tau181、AB42/40、ニューロフィラメント軽鎖)を分析するとともに、タウおよびアミロイド病理のPET画像診断を行った。

同研究の主要な発見は、血中p-tau217が89-98%の診断精度でアルツハイマー病を他の神経変性疾患と識別できたことだ。同研究でp-tau217の評価は、p-tau181、ニューロフィラメント軽鎖あるいはアミロイドベータ42/40比、および磁気共鳴画像(MRI)による血液ベースの検査よりアルツハイマー病の診断が正確だった。実際、研究者らによれば、成績は、PET画像診断や脳脊髄液バイオマーカーといった遥かにコストのかかる方法と同等だった。

研究者らは、生前に採取した血液でp-tau217を分析すると、死後、脳組織を分析してみて分かった脳のタウの変化を検知できることも突き止めた。こうした脳のタウの変化は、アミロイド斑の蓄積に関連していると考えられている。P-tau217は、アルツハイマー病の症状のない人とプラークやもつれのある人の区別を89%の精度で、プラークやより広範なもつれのある人の区別を98%の精度で行った。タウのPET画像診断結果の精度は93%だった。

アルツハイマー病患者のp-tau217レベルは約7倍に増加しており、アルツハイマー病を引き起こす遺伝子を持つ人では、そのレベルは認知障害発症の20年前に既に増加し始めていた。Hansson博士は「この検査は、検証が済み承認されれば、認知症段階になる前のアルツハイマー病の早期診断の可能性を広げることになる。これは、疾患の進行を停止または遅らせる可能性のある新たな治療法を評価する臨床試験にとって非常に重要だ」と語った。

▽血中のアミロイドとP-tauは脳のアミロイドーシス、タウオパシーの高精度マーカー

アルツハイマー病の血液検査に関する研究を進めるため、ワシントン大学セントルイス校医科大学院のSuzanne Schindler医学博士と同僚は、血中の様々なアミロイドおよびタウ測定の性能を評価した。

科学者らは質量分析を使用して血漿中のタウタンパク質をマッピングし、その結果をCSFやPETの画像測定と比較した。PETスキャンの測定で、p-tau217は、より認知度の高いタウ特異体p-tau181と比べ、脳内のアミロイド斑の蓄積により密接に関連していることが分かった。

さらに、彼らの発見は、血中のいくつかのp-tau特異体のレベルを経時的に測定すれば、臨床医や研究者がアルツハイマー病患者の病状の進行段階を確認できる可能性があることも示唆している。

研究者らによると、アミロイドとタウの両方を測定するアルツハイマー病の血液検査は、臨床試験参加者だけでなく外来患者についても、より早くより正確な認知症診断を可能にするかもしれない。

科学者らは、より広範なセントルイス地域でより多様で典型的な集団を対象にアルツハイマー病の血液バイオマーカーを開発、検証するため、「血中アミロイドと認知症関連画像診断を評価する研究(Study to Evaluate Amyloid in Blood and Imaging Related to Dementia、 SEABIRD)」を立ち上げた。SEABIRDは、多様な人種、社会経済的地位、病歴、認知状況の1100人以上の個人を登録する予定。

▽血漿中P-tau217はアルツハイマー病と前頭側頭葉変性症の識別でP-tau181に匹敵

最近の研究で、アルツハイマー病患者のp-tau181は、健康な高齢者や前頭側頭葉変性症(FTLD)と呼ばれる神経変性疾患の人に比べ3倍以上高いことが明らかになっている。AAIC 2020では、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のMemory and Aging CenterのElisabeth Thijssen理学修士とAdam L. Boxer医学博士と同僚が、p-tau181と、p-tau217と呼ばれるtau関連体のどちらがアルツハイマー病患者を最もよく識別できるかを比較した報告を行った。

このレトロスペクティブ研究には617人が参加、119人は健康な対照群、74人はアルツハイマー病患者(バイオマーカーで確認済み)、294人はFTLD患者だった。この研究グループでは、アルツハイマー病患者の血漿中p-tau181は、対照群およびFTLDと比べ3倍増だった。血漿中p-tau217の増加はさらに大幅で、アルツハイマー病患者は健康な対照群と比較して5倍、FTLDと比較して4倍だった。血漿比較の結果は、脳のタウPET画像診断の所見を正確に反映していた。脳の画像診断でタウ陽性だったかどうかの予測精度は、P-tau181が91%、p-tau217は96%だった。

研究者らによると、同研究は、アルツハイマー病患者の血中で測定されたp-tau217とp-tau181はいずれも上昇、測定値は「代表的判断基準」であるPETスキャン結果にしっかり対応していることを示した。こうした血液検査は、アルツハイマー病の診断や、臨床試験の監視ツールとして新たなアルツハイマー病治療薬の治療効果測定に役立ちそうだ。

▽Alzheimer's Association International Conference(アルツハイマー病協会国際会議、AAIC)について

Alzheimer's Association International Conference(AAIC)は、アルツハイマー病および他の認知症に焦点を当てた世界中の研究者の世界最大の会合である。アルツハイマー病協会の研究プログラムの一環として、AAICは認知症に関する新しい知見を生み出し、重要な共同研究コミュニティーを育成するための触媒として役立っている。

▽Alzheimer's Associationについて

Alzheimer's Associationは、アルツハイマー病のケア、サポート、研究を専門とする世界的なボランティア健康組織である。われわれの使命は、グローバルな研究を加速し、リスクの低減と早期発見を推進し、質の高いケアとサポートを最大化することで、アルツハイマー病および他の全ての認知症の根絶に道を開くことである。https://www.alz.org/ を参照するか、800.272.3900に電話を。

  • Oskar Hansson, PhD, et al. Phospho-tau217 and phospho-tau181 in plasma and CSF as biomarkers for Alzheimer's disease.(Funder(s): Swedish Research Council, the Knut and Alice Wallenberg Foundation, and the Swedish Alzheimer Foundation)
  • Shorena Janelidze, PhD, et al. Plasma phospho-tau217 is a potential early diagnostic and prognostic biomarker of Alzheimer's disease.(Funder(s): Swedish Research Council, the Knut and Alice Wallenberg Foundation, and the Swedish Alzheimer Foundation)
  • Suzanne Schindler, MD, PhD, et al. Mass spectrometry measures of plasma Aa, tau and p-tau isoforms relationship to amyloid PET, tau PET, and clinical stage of Alzheimer's disease.(Funder(s): U.S. National Institute on Aging)
  • Elisabeth Thijssen, MSc, et al. Comparative diagnostic performance of plasma P-tau217 and P-tau181 in Alzheimer's Disease and Frontotemporal Lobar Degeneration and correlations with [18F]Flortaucipir-PET uptake.(Funder(s): U.S. National Institute on Aging, National Center for Advancing Translational Sciences, Tau Research Consortium)

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ソース: Alzheimer's Association
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